今回は、FX取引の話を少し離れて、トルコリラ建て投資信託のリスクについて話をしようと思います。投資機関が提供するファンドには、「日興ピムコハイインカム(リラ)」や「新興国買い(トルコリラ)」など、投資信託の形を取って運用をしているものもあります。これらの投信は、分配金の高さがセールスポイントです。一方のリスクについては、売り手主導のマーケット情報の中では、なかなか語られません。
この手の投資信託は、分配金+基準価格の上下で利益が決まります。分配金が高くても、基準価格が下がってしまえば損失が出るのですね。投信が運用する純資産の目減りも曲者です。高利回りや基準価格の高騰を謳っていても、純資産が目減りしている商品が多々あります。純資産の目減り=割高となる=利回り低下と言ってよいでしょう。
今回は、トルコリラ建て投資信託に潜むリスクとして、為替リスクと分配金による純資産の目減りについて解説します。オマケで、投資信託を仕込むならどの時期かという話もしましょう。
トルコリラ建て投資信託とは
トルコリラ建て投資信託の仕組みをはじめに解説しましょう。投資信託というのは、一般から資金を募って株式や債権を運用する金融商品です。「運用」といえば聞こえはいいのですが、基本的に買いっぱなしで放置し、時期が来たら決済するという単純なものが大半でしょう。それでも新興国企業の配当と債権利子は良いので、利回りが高いことが魅力です。
表だってアピールされない材料がある点には注意が必要です。それは、純資産額の推移です。純資産額というのは、ファンドが集めた資金のトータルの金額です。信託機関は、この集めた資金を運用に割り振ります。トルコリラ建ての投資信託であれば、ご当地通貨のトルコリラでトルコの株式や債権を買うわけです。
ここに一つの罠があります。「トルコリラ建て」という言葉には、「円をトルコリラに両替して投資しますよ」という意味合いが含まれているのです。そりゃそうですよね。海外の株式を買うのに、現地の外貨がないと買うものも買えません。トルコリラ建て投資信託を買うという行為は、手元の円をトルコリラに両替し、そのトルコリラで株式を買い付ける行為であることを認識しましょう。
高利回りのトルコリラ建て投資信託には、この両替という行為にリスクが潜んでいます。一般に言われる為替レートの変動リスクですね。トルコリラの為替レートが対円で上がり続ければ得なんでしょうが、その保証はどこにもありません。トルコリラ建ての投資信託は、いわゆる「為替リスク」が潜む金融商品である。このデメリットは、「高利回り」というセールス文句の陰に隠れて、あまり表に出てきません。
リラ下落で資産目減りのリスク
為替リスクが顕在化するとどのような不利益を被るのでしょうか。具体的に示すために、以下に一つの例を出します。焦点を絞るためにトルコ株式の投資信託を例に解説しますが、債権モノ(ソブリンファンドや劣後債等)の場合でも根本原理は同じです。
トルコリラの為替レートが下落すると被る被害というのは、投資信託が運用する資産の目減りです。2011年以降、トルコリラは対円で下落を続けていますから、ほとんどのトルコリラファンドは純資産が減り続けています。以下は、冒頭に書いた著名ファンドの基準価格と純資産の推移です。
ご覧の通り、ここ最近は基準価格は下落する一方です。為替レートの変動が原因でしょう。繰り返しになりますが、トルコリラ建ての株式や債権は、トルコリラの為替レートが下落すると円建てに戻した場合の価値が下がります。外貨建て投資信託は、為替リスクが付きまとうものであることを改めて実感させるデータです。
分配金による純資産の目減り
為替レートの変動以外にも、投資信託の基準価格が下がる要素があります。その一つが、分配金の支払いによる純資産の目減りです。投資信託の分配金というのは、(本来であれば)投資で儲けを出して増えた純資産の中から支払われます。ただし、顧客の解約を防ぐためには、儲けが出ていなくても分配金を支払うケースが多々あります。
外貨建て投資信託の純資産というは、基本的に以下の要素で価格が決まってきます。
外貨建て投資信託の純資産
=(ファンド立ち上げ時の募集資産ー分配金)×為替レート変動±追加募集・解約資産
分配金は、投資で得た利益を投資家に支払うものです。この金額の大小で、俗に言う「利回り」が決まります。トルコ企業の収益が良ければ分配金が上がり、悪ければあまり儲かりません。一般には、この数値だけが一人歩きしているように思います。
分配金がどこから支払われているのかは知っておく必要はあるでしょう。基本は、投信の運用する資産から支払いが行われます。この点、決算日には基準価格が分配金の分だけ下がる傾向にあります。手元にいくばくかのお金が入りますが、投資信託の資産価値はその分、減ります。問題となるのが、儲からなくても分配金を支払ってしまうケースがあることです。
儲かっていないのに、分配金がなぜ出てくるのか?
簡単な話、純資産から身を削って支払っているのです。ファンドとしては、顧客維持のためにコミット通りの分配金を支払わねばなりません。運用で利益が出ていないのであれば、運用資産を削って支払うしかないのです。先ほどのグラフで見てみると、ここ最近は純資産も目減りを続けていますね。これは、リラ安の影響ばかりではないでしょう。
投資信託を仕込むならどのタイミングか
こんなトルコリラ建て投資信託・債権ですが、証券会社は売りたい一方で、絶賛大売り出し中です。本サイトにも詳細を知りたがる読者の方がいたので、今回、管理人の方で解説をしてみました。管理人は投資信託は扱いませんが、10年弱の株式取引の経験があります。
証券会社の営業マンが売りたがるのは3月や9月の決算前の時期のようです。理由は、営業ノルマがあるからです。人の良い方は、営業マンの都合で買ってあげればよいでしょう。老舗の信託銀行や証券会社の営業は、そうしたお人好しのお金持ちの好意で支えられています。
そうでない方は、買う時期を考えましょう。トルコリラ円の為替チャートを読んで見通しを立てることができればベストですが、あいにく、この手の金融商品に興味がある人は、為替取引のスキルに無頓着です。そこで、単純な買いの時期だけ指針を示しましょう。
トルコリラ建て投資信託・債権を仕込むとよい時期。それは、立ち上げ時の新規募集のタイミングです。理由は、後々に追加募集が掛かるからです。この手の高利回りの投資信託には一定の需要があって、得てして追加の買い入れが行われます。追加の買い入れがあれば価格は上がる訳で、短期間で見ても、分配金+基準価格の上昇でプラスになると考えます。ポイントはむしろ、どこで解約して分配金を打ち止めにするかという点でしょう。
余談
結局の所、為替レートが読めずに外貨建ての金融商品を買うこと事態が無謀であるという意見が、管理人の思うところであるという点は、主張しておきます。投資は自己責任であることを頭において、決断してください。
さらに意見を言うのなら、トルコリラ建て投資信託なんて、一体、どの年代に訴求する商品なのかも分かりません。リスキーな商品ですから50代以降の年輩層には向きません。かといってリスクの取れる若年層は投資信託を買う資産がありません。むしろ若年層なら、自分でFXをやって投資リテラシーを磨いた方が、長い目で見て自分のためになります。
「トルコリラ外貨預金に潜む5つのリスク」でも述べましたが、基本的にこの手の金融商品は「目をつぶって買うもの」です。利益が上がったら人のおかげで、損をしたら自分の責任です。宝くじと同じで、自分の努力や意図とは無関係にお金が動くものだと割り切りましょう。
少しでも投資の経験を増やしたいという方がいるなら、そんな方に本サイトはヒントを差し上げています。少なくとも、自己責任で投資に取り組むことができるはずです。