2019年度も間もなく上期が終了します。今回は、新興国通貨の現状について簡単なまとめをしてみたいと思います。
2019年のトルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソは大ショックを伴う動きもなく、例年に比べて穏やかな値動きをしています。それでも、ファンダメンタルズ材料で上下動していて、特に米国を中心とした貿易摩擦が新興国通貨の値動きにも波及している状況です。当然ながら、各国固有の材料もあり、市場はその先行きを固唾を飲んで見守っています。
そんな訳で、今回は新興国通貨の現況と主な材料について、管理人なりの一言コメントを加えながら解説していこうと思います。
米国の動向に左右される為替市場
最初に新興国為替市場の総論からコメントしていきましょう。
端的に言って、現在の新興国市場は米国の動向次第で動いていると考えます。主な材料は2つ。米中摩擦と米国金利です。
兼ねてから悪化している米国と中国の貿易摩擦ですが、その余波は当事者間のみならず、他国の金融市場にも及んでいます。特に南アフリカは中国との結びつきが強いことから、米中摩擦が悪化すればランドが売られるという状況が出来上がっています。中国の外交問題は関係ないようでいて、市場はしっかり南アフリカ経済のリスクとして為替レートに織り込んでいます。
メキシコも同様で、以前から問題視されている移民問題が再浮上。米中間の摩擦が強まれば、次はメキシコと言わんばかりにペソが売られる展開です。いまや、中国の問題は他の新興国の先行きを代表するかのような経済ニュースとなっています。
もっとも、米中摩擦が弱まると同時にすぐさま買い戻されるという、楽観的とも言える値動きも見せています。上下動はあるものの、その動きをうまく捉えた読者の方は、大きな利益に繋がったていることでしょう。。管理人もいくらかは波に乗れていて、淡々とその実況をtwitterで行っています。
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一方で不透明なのは米国金利の動向です。去る9月18日のFOMCにて、FRBは市場の予想通りに0.25%の利下げを実施しました。ただ、市場が期待しているのはもう1回か2回の利下げです。この点について、FRBのパウエル議長は声明文にヒントを残さなかったため、今後の見通しが全くの不透明となっています。
追加利下げとなれば米国はリセッション(景気後退)を回避し、バブルの可能性すら出てきます。その経済効果は新興国にも波及し、カネ余りの状況から大きく通貨レートも伸びることでしょう。特に米国経済の恩恵を受けやすいメキシコは大きくペソの上値を伸ばすものと考えます。
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ただし、前述の通りに米国金利の先行きは不透明となっています。ともすれば話題となろうものの、明確な解答については10月開催のFOMCに先送りされているという状況です。
トルコのファンダメンタルズは意外に堅調
それでは各国の為替動向に話を移しましょう。まずはトルコリラです。
トルコリラは堅調を維持しています。昨年までは米国との外交関係の悪化やシリアの復興課題など、ネガティブなニュースが紙面を賑わわせていました。しかし、今年に入ってからは経済指標が思いのほか良く、また外交面でも米国との関係に回復の兆しが見られるなど、良いニュースが続いています。
特に長年の課題であるインフレ問題については、予想を下回るインフレ率に落ち着くという結果が出ています。その結果を受けて政策金利を引き下げるという動きもありましたが、市場はその事実を真摯に受け止め、いまだ為替レートは堅調さを保っています。
チャートを見てみると、長らく続いた下落トレンドを抜けてレンジ相場に入ったことが分かります。最悪期は脱出し、回復期に向かう傾向とも言えるでしょう。今後、現在の経済状況を維持することができれば、もう少し上値に余地があるものと考えます。
ちなみに管理人は1リラ=22円までの上昇を見込んでいて、毎月堅実に積み立て口座を増やしています。
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南アフリカは格下げリスクがくすぶる
お次は南アフリカランドです。
南アフリカの経済は総じて軟調です。財政問題が重しであり、赤字拡大が懸念されています。それゆえに格付け会社が格下げ評価を行う可能性があり、予断を許しません。
現在の所、世界3大格付け会社のうち、フィッチとスタンダードプアーズは南アフリカを投資適格級から外しています。唯一、ムーディーズのみが南アフリカを投資適格級に据え置いています。このムーディーズが格下げ評価をしてしまうと南アフリカの格付けはジャンク級入りとなり、多くの投資資金が引き上げられると言われています。
記事を書いている2019年の現在、いまだにムーディーズは格付けを発表していません。南アフリカには依然として格下げリスクがくすぶる格好となっています。
チャートを見てみても、危うい兆しが出ています。三角持ち合いの下方ブレークです。
昨年から南アフリカランドは対円で三角持ち合いのチャートを続けてきました。ただ、先月の米中貿易摩擦がクローズアップされた際に、この三角持ち合いを下方にブレークしたのです。今までの保ちあい相場で蓄えられてきたパワーが売りに回りそうな格好をしたチャートとなりました。
目先でも、南アフリカランド/円は三角持ち合いの下方に位置したまま下落しそうな勢いです。ここで買うのはちょっと勇気がいる場面であると言えるでしょう。
メキシコ経済は堅調だが米中摩擦が重し
最後にメキシコペソについてのコメントをします。
メキシコの経済は引き続き堅調を維持しています。2016年から財政収支は黒字を続け、2019年も対GDP比で1%の黒字を見込んでいます。長らくの懸念事項であった、米国との貿易協定に関する交渉も無事に終了し、しばらく大きなリスクはないかのように思えました。
ただし、ここにも米国との外交問題が影響を及ぼします。メキシコの移民問題です。トランプ大統領がメキシコに対し、移民の流入を抑えられなければ関税を上乗せすると脅したのです。
幸いなことに問題は事なきを得ました。ただ、メキシコペソは急落。未だに移民問題がリスクとして残っていることを思い出させる結果となりました。
前述の通り、経済が好調な一方で、アメリカとの外交リスクが残るメキシコ。チャート上にも、そんな押し引きの動きが表れています。三角持ち合いのチャートです。上記はドル対メキシコペソのチャートを週足で表示しました。
三角持ち合いなので、基本はブレークした方向について行きたい形です。おそらくヒントはアメリカ経済です。米国がバブル入りすれば、その余波を受けてペソも上がる格好となることでしょう。
米国がバブル入りするためには、少なくともあと1回か2回の利下げが必要です。10月のFOMCに期待が掛かります。アメリカ経済を横目で見ながら、ペソのチャートを読む。そんな展開になりそうです。
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以上、今回は2019年上半期の振り返りを行ってみました。今年も残り3ヵ月です。黒字での締めくくりとなるよう、引き締めて参りましょう。