2017年が始まり、早1ヵ月。段々と各国の金融政策が整ってきました。今回はその中から有望な金利通貨を紹介したいと思います。一口評価を加えて、概要を語りたいと思います。
我らがトルコリラには、困った事態が起きました。市場予想に反して、トルコ中銀が政策金利の据え置きを発表したのです。利上げであれば通貨防衛の決定打となっただけに、据え置き発表には失望を隠しきれません。トルコリラのスワップ運用を始める時期は後ずれしたと考えます。
そんな訳で、今回はスワップ運用を目論む方に向けて、他の有望通貨をご紹介したいと思います。あえてトルコリラ「以外」でという取り組みです。
トルコリラの運用はもう少し先
冒頭に書いた通り、2017年1月のトルコ中銀は政策金利の据え置きを発表しました。これを受けて、為替レートは乱高下。先行きの不透明感が高まりました。長期のポジションを作るには躊躇すべき材料が出てしまったと感じます。
今回、市場が注目していた内容は利上げの有無どころか、それを大前提とした利上げ幅の大小でした。アナリストの見解としては「通貨防衛には最低でも+1.0%の利上げは必要」「ただ現実的には+0.5%辺りが妥当か」という議論です。0%という中銀の回答に市場は完全に肩透かしを食らい、直後にリラは大きく下落するという値動きを見せました。
直近では、中銀がいくつかの手段を使って為替介入を行なっているものの、その効果には疑問符が付きまとっています。過去、同じ新興国としてブラジル中銀も同様の介入策を採っていました。ただ、最終的には利上げに踏み切り、その後にようやくレートが回復する傾向を見せています。トルコリラも市場の期待に応えて利上げを行なわない限り、為替レートが落ち着くことはないと思います。
正直、スワップ運用や長期保有を決め込むには難しい状況であると考えます。
2017年に有望な金利通貨
スワップ運用の投資先として、トルコリラの金利は確かに魅力です。ただ、見通し不透明の中での長期保有はリスクが高く、オススメできるものでもありません。むしろ、最近のファンダメンタルズの変化が追い風になっている通貨に投資資金を振り向けた方が妥当な結果になるのではないかと思います。
昨年2016年から続く変化を追っていくと、原油含むコモディティ価格の上昇や、米国経済の好調といった好材料が挙げられます。また、マイナス材料であった先進国のインフレ率低下には歯止めが掛かり、中国経済の後退や中東問題といった諸問題も後退しつつあります。ただ、EUではイギリス離脱に見られる混乱といった悪材料も出現しました。
これらの材料を総合すると、オーストラリア+ニュージーランド、南アフリカ、そしてアメリカ+日本辺りから景気の良さそうな声が聞こえてきそうです。逆にユーロは苦難の連続になるかも知れません。これらを勘案して、スワップ運用で結果を出しそうな通貨を紹介していこうと思います。
オーストラリアドル
最初はオーストラリアから。元祖スワップ運用の代名詞とも言える豪ドルです。
基本的に鉄鋼石・石炭の資源を輸出する国です。資源価格の上昇は景気にプラスになって反映されると考えます。また、最大の輸出先は中国です。昨年のチャイナリスクの台頭で先行きが不安視されましたが、中国政府が構造改革を唱え始めたことでリスクが後退しつつあります。
政治の面では、同国の政権は長らく迷走していて不透明感が漂っていました。ただ、昨年7月に総選挙を終えた一服感がありますね。これを受けてか、直近でムーディーズから格付けAaaで据え置きの評価が与えられました。政治的なリスクは低いのではないかと思います。
面白い話としては、オーストラリアが南半球に位置するので、これから夏を迎えることでしょうか。四季のある国での経済活動は往々にして、夏季に活況を迎えます。それに合わせてか、過去の推移を調べると新年のこの時期から豪ドルの為替レートが上がり始める傾向があることに気付きます。季節要因を考慮したトレードというのも面白いのではないでしょうか。
尚、変化球的に隣国のニュージーランドドルを買ってもよいかも知れません。その経済のほとんどをオーストラリアに依存しているので、似たような値動きを見せます。前述のチャイナリスクやオーストラリアの政治問題がクローズアップされてきたら乗り換えるという選択肢もアリだと思います。
南アフリカランド
同じく資源価格の影響を強く受けるのが南アフリカです。金・銀・プラチナといった希少金属に加え、鉄鋼石といった産業資源を輸出して貿易黒字を稼いでいます。新興国の中でも、いわゆる資源国に該当する国ですね。
この国の通貨「ランド(ZAR)」が良い点は、インフレ率や為替レートに懸念が出た際、中銀が適切な対応を取ることですね。2014年に利上げによる通貨防衛を始め、2016年にはランドに底打ち感が出ました。外貨準備高の不足や高利による成長停滞に懸念は残るものの、まともな対応をするという点はどこかの国と違って安心感があります。
政情や治安には不安が残りますが、そこは新興国投資の宿命です。ただ、アフリカ諸国の結束が固まりつつあり、非合理な政治問題に対しては隣国が介入して解決するという姿勢を見せています。産業上の結束を示す出来事としても、年末にアフリカ開発会議(TICAD)が初めてアフリカ大陸で開催された事情もありますね。以前は開催当時からずっと日本で開催されていて、日本がホスト国でした。何気に日本とも関わりの深い国です。
ドル円
面白い所では、ドル円のスワップ運用を考えています。米FRBが利上げを進めていることはご存知の通り。結果として、日本と米国の金利差が拡大して、無視できない程度のスワップポイントが発生しています。2017年1月の現在で、20円/lot程度です。
本質的な問い掛けとして「米国の経済が良くなるか?(ドル高)」と「それに順ずる日本の株価は上がるか?(円安)」という課題があります。そのヒントとして、当面のキーマンであるトランプ大統領がいる訳です。幸いなことに、同氏は有言実行の経済政策を計画しています。インフラ投資や規制緩和が景気刺激策に当り、これらの政策に対する期待が株価を押し上げます。
目先ではドル高牽制の発言が出ていますが、生憎ながら口先介入であり、未だ政策に盛り込まれていません。むしろ、政策面で注視されているのは実行能力の有無です。しかし、こちらのリスクも表面化していません。リスクが表面化するまでの「期限付き」であれば、中長期的にドル円には上値の余地があるのではないでしょうか。
スキャンダルや暴言すらも押し目と考えれば、面白いトレードができそうです。ただ、メディアの意見や不安材料に振り回されないだけの相場観は必要ですね。それもまた、長期投資を目論む投資家の宿命であったりします。
国内FX会社の扱いは
以上の通り、トレードの材料を交えて中長期の投資対象を紹介してみました。個人的には南アランドに良さそうな空気を感じますね。ただ、リスク要因や金融政策をここから深堀りして調べないとならないのが辛いところでしょうか。
トルコリラも見捨てた訳ではなく今後も注視していきます。いや、むしろ売りでもいいんじゃないかと考えます。幸か不幸か、為替レートの下落によって支払いスワップも下がっています。多少の期間であれば、負担は少ないのではないでしょうか。南アランド買いのリラ売りなんてトレードも面白そうですね。
今回ご紹介した通貨ペアは、全てセントラル短資FXにて取引することができます。面白い所ではEUR/AUD(ユーロ/豪ドル)やAUD/CHF(豪ドル/スイスフラン)なんて通貨ペアもありますね。ユーロもスイスフランも0金利通貨なので、スワップポイントの金額が対ドルより高い点が特徴です。中国復活の兆しが見えれば、人民元/円を選択肢に入れてもいいですね。