昨年から問題になっている中国経済の成長鈍化懸念を扱いたいと思います。為替相場との因果関係を交えて語っていきます。
2016年の初頭から、ニュースを騒がせている中国市場。表面的には株価市場の下落が取り沙汰されていますが、背景には中国経済への懸念が起因しています。問題は、実態がなかなか見えてこないこと。先行きに対する不透明感=リスクが、市場の投資意欲を削いでいます。
市場に漂うチャイナリスクの正体を見極めるために、今回は中国経済の根幹的メカニズムに突っ込んで解説を加えていきたいと思います。
チャイナリスクの見通し
結論から述べると、チャイナリスクは明確な解が出てこないタイプの問題と考えます。そもそもリスクというものは、一旦生じてしまえば、為替や株の市場価格に織り込まれていく性質を持ちます。しかし、中国の場合は肝心の実態を探るデータが公開されません。どこまでリスクが拡大しているのか実態が見えないのです。内向き体質、改変OK、体裁第一の文化があるお国柄ですから、自国の弱みをさらすような悪い発信することはないでしょう。
一転して、為替市場にとってのリスクとは「先行きが見えない不透明感」のことを指します。前述の通り、中国経済にとって悪いデータが出てくることはないでしょうから、中国経済の実態を解明するには非常に長い時間を要すると予想します。リスク=不透明感が長く続く訳です。チャイナリスクは2016年の間に浮かんでは消えを繰り返し、長くジワジワと市場に影響を及ぼすことでしょう。類似性で考えると、2009年から未だ現在まで続くギリシャ問題に酷似していると考えます。
それでも諸外国からは中国の実態を解明しようとする試みがなされています。そのひとつが中国の資本投資比率のデータを読み解こうとする試みです。
上記は、中国と米国・日本の投資額対GDP比を示すグラフです。ご覧の通り、バブルが弾けたと言われる昨今まで、非常に高い投資比率を記録しています。実は、このデータの中に中国の本質的な問題が隠れているのです。
病巣は中国の官製バブル
2016年の年明けから市場を混乱させているチャイナリスクですが、実はまだ決定的な材料が出ていません。これは先に述べた通り、中国政府が悪い情報を流さないためです。明確な悪材料が出ない限り、市場は不透明感を拭うことができません。
では、チャイナショックの根本的な問題は何なのか?
答えは、過剰投資による官製バブルが弾けたことです。
先に示したグラフの通り、中国はこれまで異様なまでの生産設備増強に取り組んできました。政府主導の国策です。ひたすらに生産規模の拡大を追い求めた結果、グラフに示されるような過剰な投資を続けてきたのです。冒頭に述べた官製バブルの実態です。
しかしながら、原油や鉄鋼といったコモディティ価格の低下に見られるように、需要が低迷を始めました。生産設備というものは、製品の需要があってはじめて役に立つものです。しかし、過剰な生産能力が市場の需要を大きく上回ってしまいました。これまでの投資によって積み上げてきた設備は、もはや無用の長物となってしまったのです。
実は以前から、中国の投資対効果が伸び悩んでいることが噂されていました。いくら投資をしても、生産能力が向上しなかったのです。それも当然と言えば当然。もはや生産設備が過剰に用意されている状況であったという訳です。生産設備への投資が不要となったところで、中国の国内需要は飽和。ここでバブルが弾けたという寸法です。
投資市場への影響
ここまでチャイナリスクの実態と正体を述べてきました。話題を変えて、投資市場への影響を語りたいと思います。
繰り返し述べてきましたが、今後も中国政府から経済の実態を示す悪材料が示されることはないでしょう。これは政府公表の経済指標についても同様です。経済成長率や貿易収支といった公的な経済指標ですら、本当の数字を示すことはないと考えます。こうした実態の見えない経済に対して、市場はひたすらに不信感をもって臨んでいます。
今後も繰り返されるのは、ことある毎のリスク回避思考です。世間のニュースでは、リーマンショックの再来か?といった論調が報じられています。ただ誤解されたくないのは、リーマンショックのような突然のパニックとはならないことでしょう。チャイナリスクに突然死はなく、断続的な愁訴を訴えるタイプの症状を抱えている状況と診断しています。
ことある毎に事実を伴わないリスク回避の懸念ばかりが市場の投資意欲を削ぐ市場心理。これはリーマンショックよりも、ギリシャ問題が渦中にあった頃の市場心理に酷似しています。おそらく10年単位で市場は実態を織り込んでいくことでしょう。最近になって、やっとこさ中国政府が構造改革の必要性を考え始めたようですが、これには長く苦しい道のりを歩まねばなりません。
期待で買って事実で売る。これが投資の普遍的法則です。チャイナリスクはこの真逆の影響を市場に与えることでしょう。「懸念で売って事実で買い戻す」という状況です。指標やニュースで緊張が高まったところで売られ、イベント通過で緊張が緩んだところで買い戻される。2016年はそんな投資サイクルが続くと想像しています。
投資戦略について
最後に投資の戦略論を述べたいと思います。こうしたリスク心理が市場を支配する状況では、逆張り戦略が有効であると考えます。米QEやアベノミクスで上昇一辺倒であった株式市場、逆に資金流出で下落を続けた新興国市場といった一方向の相場とはなりません。順張りは逆効果。サイクルを意識した押し目買いと戻り売りの逆張り戦略が基本になると考えます。
押し目買いと書きました。これは何も全ての投資市場が下落すると言っている訳ではないという意味です。すでに十分に下落しきった商品先物やそれに連動する資源国通貨(ロシアルーブルやカナダドル)、そして我らがトルコリラあたりは買いのチャンスが巡ってくると考えています。長期のスパンで見れば、ここら辺も逆張りの戦略が有効であると考えます。下落を始めるのは、米株式や日本株式などの先進国市場、または資源国の中でも中国の景気に連動する豪ドルあたりでしょうか。
冷静に考えれば、心理で動く相場というのは成長中の市場にとっては絶好の押し目買いチャンスになります。論理で買うか、感情で売るか。デキる投資家は前者で、事実の確認と将来の見極めを優先します。
今回、チャイナリスクの本質と銘打って、管理人の考える中国経済像に迫ってみました。読者の方には、市場の心理に振り回されず、ピンチをチャンスに変えて頂きたいと考えます。次回は、本ブログの趣旨であるトルコリラに与える影響を考察したいと考えます。
※本記事は、管理人の主張を述べることを目的としており、将来に渡って事実との乖離が生じ得ます。投資は自己責任です。FXや株式相場への参加に当たっては、読者の方の自己の判断で臨んでください。