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チャイナリスクがトルコリラに与える影響

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今回は中国経済の成長鈍化懸念が世界に与える影響を紐解いていきたいと思います。本ブログの主旨であるトルコリラへの影響も考察していきます。

チャイナリスク。直近のニュースで頻繁に目にするようになったこのキーワード。その本質は、市場が抱く不信感です。中国という閉ざされた経済に対する不信感が市場のリスクオフを招いています。それでも中国を切り離すことができないのが、現在の世界経済。中国市場への依存度を高めてきたツケがここに来て回ってきています。

中国経済とトルコ経済。現在の所、両者に因果関係は認められません。ただ今後は、アメリカの段階的利上げが抑制されるリスクが認められます。米国経済という橋渡しを介して、チャイナリスクがトルコリラへ与える影響を語りたいと思います。リスクオフの心理相場と米国利上げペースがポイントです。

中国という企業の問題

中国の官製バブルが表に出ない間に弾けた。この内容は、前回のブログでお話しました。以前から、中国は政府主導で生産設備への投資を続けてきました。しかし、供給能力が需要を上回りました。生産のための生産を繰り返し、ひたすら国庫の資金を注入するフロー=官製バブルが飽和点を迎えたのです。

参考記事:チャイナリスクの本質と市場への影響

中国をひとつの企業に例えると話が分かりやすくなります。まず一般に、企業というものは収益を上げるために設備投資を行います。もっとも投資資金は回収する必要があるので、どこかで設備投資を止め、資金回収の期間を設けます。その間に投資した設備が利益を生み、キャッシュフローがプラスに転じます。結果、徐々に資金がプールされていきます(内部留保)。

中国という企業は、上記の資金回収期間を設けない暴走列車です。いまだに設備投資資金は高止まりを続け、一向に回収の目処がたっていません。バーゲンセールで競争力を高めようとはしていますが(=元切り下げによる輸出力強化)、これは本質的な収益力改善には結びつかない施策です。

こうした企業が辿る末路はお決まりのパターンです。粉飾決算です。直近では東芝が良い例でしょう。中国の場合は、既にGDPや輸出入収支の経済指標で改竄が行われていると言われています。

ネガティブな情報を当局が隠し続けていること。それに対する市場の不信感。ここに投資市場に与える悪影響の本質があると考えます。

中国経済鈍化が先進国に与える影響

一般の企業であれば、粉飾決算の先に待つモノは破綻です。ただ中国の場合、潰れてもらっては困る理由がいくつかあります。どれも中国経済への依存度を高めてきた結果生じているもので、いまや中国は切っても切り離せない状況になっています。

具体的に見ていきましょう。

供給過多による資源安

これまでの中国経済の活況ぶりは、資源の需要を増やしてきました。中国は2次加工産業、要は材料を買ってきて加工して売るメカニズムの商売を得意としているためです。資源の代表例は、鉄鉱石と石炭です。これらを加工すると、製品への直接投入が可能な鉄鋼が生まれます。

鉄鉱石と石炭と言えば、オーストラリアです。事実、オーストラリアの輸出先第1位は中国です。当然ながら、中国経済鈍化の影響をもろに受けていて、中国の経済指標で豪ドルの為替レートが動きます。直近では、チャイナリスクが豪ドル安を招いています。

余談ですが、中国産の鉄鋼と言っても、厳密には中国産の鉄鋼は質が悪いので用途が限られます。ただ、ともかく安いので日本含む各国企業は中国産の代替利用を進めてきました。鉄鋼という大枠で価格が決まってしまうためか、高品質の鉄鋼にも資源安の影響が及んでいます。日本の製鉄業の収益も悪化していて、先進国経済にもマイナス要因をもたらしています。

合弁企業の収益低下

中国の成長低下懸念が与える影響の2つ目として、外資と中国政府の合弁企業の収益率が悪化する懸念があります。中国に進出している外資企業のほとんどは、政府機関との共同出資による合弁企業です。この合弁企業の悪いところは、中国政府がイニシアティブを握っていることです。

先に示した通り、中国市場には成長低下懸念があります。こうした状況では需要低下が見込まれるので、通常の企業であれば生産を抑制して過剰在庫を回避します。ただ、政府機関が株式の大多数を握っている状況では、そのような意志決定ができません。そして、中国政府はいまだに成長政策を標榜し続けています。

予想される当然の事態は、在庫過多による収益率悪化。そこから波及して、中国に進出している外資企業の利益を圧迫します。ここでもチャイナリスクが巡り巡って、先進国企業の収益悪化を促す構造になっています。

米国債放出による下落リスク

中国政府による対外政策も世界経済に影響を与えそうです。特に大きな要因になるのが、市場介入による為替レートのコントロールです。中国元は停滞懸念により既に切り下げ局面に入っていますが、急激な変動を押さえるために介入を行うとの予測がなされています。

具体的な介入手法としては、ドル売り外貨買いでしょう。中国は米国債の形で大量のドルを保有しています。もし、為替介入を行う予定があるなら、この米国債権を取り崩してドルを売ってくることでしょう。ドルを売って近隣諸外国の通貨を買う方法を取ると予想できます。この諸外国通貨に日本円が含まれることも想定されます。円高圧力です。現在でも既に、ドル売りを実施しつつ、タイバーツの買いを実施しているとの噂も出ています。

この手法は潜在的な混乱リスクも抱えています。ドル暴落の混乱です。中国が保有する大量のドルが一気に市場に放出されればドルレートが一気に進んで、世界経済は大混乱。流石にそうはならないでしょうが、それでも外貨準備高が減ってくれば中国経済の破綻リスクが浮上し、再びリスクオフ市場の材料となりそうです。いずれにせよ、中国の外貨準備高は市場が注目するトレード材料になると考えます。

注視すべきは米国利上げの進捗度

話をトルコ経済への影響に転じましょう。ここまで書いてきたチャイナリスクの内容は、流石にトルコ経済に直接的な影響を与えることはなさそうです。ただ、世界経済そのものがリスクオフ傾向となれば、間接的にトルコ投資にもマイナスの影響を与えます。

目に見える形でトルコリラの為替レートに影響を与えるニュースは、米国利上げの進捗度でしょうか。管理人は、基本的にトルコリラへの投資回帰が米国利上げの進展に伴って進むと考えています。理由はドル調達リスクが上昇するためです。借り入れ金利が上昇するに従ってヘッジファンドの利益を圧迫し、より高リスク高リターンの運用を余儀なくされるためです。

参考記事:金利上昇で新興国投資をするファンドの事情

米金融緩和の最中はゼロ金利の米ドルは調達コストが安く済みました。もっとも、さらに低利回りの債権市場が飽和していたため、中リスクの米国株に資金が集まりました。現在、この米国株も飽和を迎えつつあります。今度はより高リスクの新興国投資に資金が回帰するというシナリオを考えている訳です。この点、利上げペースが停滞すれば、ヘッジファンドはまだ低中リスクへの投資に依存を続けることができます。

一方では、高リスクの新興国投資への回帰が遅れます。当然ながら、FRBとしてはそんな怠慢な状況を避けるべく利上げに踏み切った訳です。しかし、チャイナリスクが米国経済に波及するとなると、利上げの手綱を緩めるかも知れません。FRBが利上げの手綱が緩ませた分だけ、新興国投資への資金回帰が遠のくと考えます。

チャイナリスクはトルコリラの為替レートに間接的な悪影響を与えます。ただ、トルコリラに関して言えば、管理人はまだまだ楽観視を続けています。前回もお話しましたが、チャイナリスクは突然死を起こすタイプの病状ではありません。ことある毎に投資心理を悪化させる繰り返し型のリスクオフ要因であると考えるためです。昨年まで下落を続けてきた新興国通貨が上昇トレンドに転じるためには、多少の迷いを伴う揉み合いの状況を避けて通ることができません。「上昇相場は迷いの中で成長する」とは、長期投資家の澤上篤人氏の言葉です。

心理=感情で売るのは、投資初心者が陥りがちな罠です。長いスパンで利益を出し続けるのであれば、論理=戦略で買うべきでしょう。投資心理の悪化を好機と捉え、押し目を拾っていく。この戦略が今年のテーマになると考えています。

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