今回はトルコリラの通貨ペアを3つご紹介し、どの通貨ペアで取引すべきかを考えていきたいと思います。
トルコリラは主に3つの通貨ペアがあることが知られています。トルコリラ円、対ユーロ、そして対ドルです。
これらの通貨は一見して同じような動きをするようでいても、実は明確な差があります。日本、欧州、米国の金融政策を色濃く反映する性質も持ち合わせているからです。
そんな訳で、以下には日米欧の金融政策を交えながら各通貨ペアの特徴を掴んでいきたいと思います。
トルコリラの代表的な通貨ペア
国内でトルコリラのFXトレードをする場合、代表的な通貨は3つあります。
- EUR/TRY
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ユーロ対トルコリラです。 ISOの表示規格に基づいて、EURが先の表示でTRYが分母になります。
金利を考えた場合、「EURの金利<TRYの金利」であるため、TRYを買うことでスワップポイントが付きます。 つまり、スワップポイントを狙うのなら、EUR/TRYのBid(売り)です。
- USD/TRY
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同じくISOの表示規格により、USDが分子、TRYが分母になります。
基準通貨の米ドルを通して見ると、トルコリラの世界的な上下動を把握することができます。 スワップ金利がプラスになるのは、USD/TRYをBidした場合です。
- TRY/JPN
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日本円に対するトルコリラの価値を示す通貨ペアです。
いわゆる「クロス円」の一つです。 USD/JPNやEUR/JPNと同じ並びですので、こちらの方が直感的に把握しやすいかもしれません。
国内のFX証券会社で取引ができるのが、上記の3ペアです。 よほどのことがない限り、他の通貨ペアでトルコリラを取引することはないでしょう。そこで、これらの通貨ペアの特徴と、どの通貨ペアで取引するべきかを考えていきます。
かつてはEUR/TRYが流行った時期も
初めてトルコリラを扱う人はピンと来ないかも知れませんが、過去にはEUR/TRYのペアが流行した時期がありました。 その理由は、「トルコリラとユーロに連動性がある」という都市伝説!?があったためです。
「トルコはユーロ圏への加入を目論んで政策を合わせているから連動する」 「トルコはユーロ圏に近いから、地政学的に近似関係にある」 「トルコリラとユーロは連動して動く」「だからEUR/TRYを売れば変動リスクなしにスワップを取れる」。そんな手法がまことしやかにささやかれたことがありました。
確かに、ユーロとトルコリラが連動していた時期もあります。ただ、多くの場合、通貨ペアの連動性というのは結果論であって、未来を予測するには向きません。
実際問題、チャートを見ればEUR/TRYに為替変動があることは一目瞭然です。
現在、EUR/TRYは上昇一辺倒のトレンドにあります。 スワップが支払い側のトレンドなので金利運用には向きません。 むしろ、低スワップの証券会社を選んでBidで挑むと面白い所だと思います。
ユーロとトルコのファンダメンタル分析
2013年の初頭から、金融関係のサイトやコラムでは「ユーロが上がる」との予想が多くなされていました。 実際、今年度一杯をかけてユーロは対ドルで上昇。 ユーロ圏の株価指数も上がり、EUは景気回復の兆しを見せるようになりました。
一方でトルコは、隣国シリアの物騒な状況が続きます。 シリア問題です。 ここでは詳しくは説明しませんが、「シリア問題」「アサド政権」「シーア派」といったキーワードは、ニュースでよく聞くところです。 トルコもイスラム勢力としてあながち無関係ではなく、いつシリア問題が飛び火してもおかしくない状況が続きました。
また、トルコ経済そのものも、成長が鈍っている傾向があります。 GDP成長率は依然として堅実に伸びてはいるものの、政府目標に届かないなど。 今年はバッドニュースが多くありました。 別途解説しますが、アメリカ金融緩和の影響によるインフレ懸念もくすぶっています。
これらの事象が象徴するように、ユーロとトルコを比べたとき、景況感が良さそうなのは断然ユーロ圏です。 このことから、今は対ユーロでトルコリラを買うのはあまり面白くありません。 むしろトレンドはEUR/TRYの買いです。 このトレンドは2013年初頭から続き、現在まで全く崩れませんでした。
そんな訳で、2013年以降はEUR/TRYでトルコリラを買うという選択肢はなかったと言えます。
USD/TRYで見る世界の金融動向
米ドルは、世界でもっとも取引量の多い通貨です。 それは、対トルコリラであっても変わりはありません。 そのため、トルコリラの世界的な趨勢を考察しようとしたときには、USD/TRYのチャートを見ると大局を掴みやすいと思います。
2013年から2018年はUSD/TRYが上昇トレンドを描いた年でした。
この理由は、トルコの内情云々よりもアメリカの金融緩和策が強く影響したことです。 2012年まで、アメリカは積極的に金融緩和策(QE)を続けてきました。 金融緩和策というのは、端的に言うとドルを刷って市場に流すことです。 市場に流れるドルが増えれば、供給過多となりドルの価値は下落します。 結果、2012年までは豪ドルやブラジルレアル、そしてトルコリラといった金利通貨が買われ続けました。
しかし、2013年に注目されたのは、金融緩和策の出口戦略です。 これまでの金融緩和策が効を奏してきたので、QE縮小が噂されるようになったのです。 実際、この記事を書く2日前に、FRBのバーナンキ議長は緩和縮小を発表しました。
緩和縮小となれば景気の良いドルや株式に資金が流れます。 2013年は、金利通貨の買い持ち解消⇒ドル買い・株式買いへのリスクオンの年でした。
そのような訳で、USD/TRYは上昇トレンドにありました。 つまり、トルコリラの価値は減少。対ドルで売られ続けたのです。結果、USD/TRYの売り持ちでスワップを狙うには無謀な年でありました。
トルコリラを買うならTRY/JPNで
そんな2013年にも上昇したトルコリラ通貨ペアがありました。正解はトルコリラ円だったのです。
その理由は、言わずと知れたアベノミクスです。 2012年。自民党政府は、金融緩和により景気回復を図りました。 通常、金融緩和では通貨の価値は減少します。 日本もそれに習って対ドルで円安となりました。
特に日本円の場合、安全通貨としてリスク回避のために保有されてきた経緯があります。 それが世界的なリスクオンとともに、金の流れは安全通貨から国内株式・海外株式へとリスク資産に流れつつありました。 ここにアベノミクスが緩和策による株式の購入を決めたことが、円離れを後押ししました。 円の価値下落と株高の可能性が一度に来たわけです。 詳細は他のサイトさんにお任せしますが、ともかく円安・株高の年でした。
円安は、対トルコリラでも進みました。 トルコリラは、2011年から40円~50円の範囲で推移してきました。 トルコと日本の景気がうまくシーソーゲームで押し引きしていたのです。 そのバランスが崩れたのが、2012年10月。 自民党への政権譲渡が行なわれ、日本がアベノミクスによる金融緩和策へと舵を切った時期です。 結果、2013年1月には50円の大台を抜け、最終的にTRY/JPN=56円まで値を伸ばしました。
ファンダメンタルで考えると、日本の金融緩和と円安傾向は今後もまだ続きそうです。 このため、スワップ狙いでトルコリラを買うなら、TRY/JPNが妥当な判断です。 長期で保有するにしろ、両建てをするにしろ、筆者は未だに取引の機会は続いていると考えています。