今回は、トルコのエネルギー事情を背景に、トルコの成長力と長期投資のポイントを解説していこうと思います。具体的には、現在の状況と過去の歴史的経緯から、2023年に訪れるであろうトルコの黄金期を描いてみました。
今回の内容は、以下の通りです。
トルコの工業化の流れ
トルコのセールスポイントの一つが工業であることは、FXでトルコリラが魅力的な3つの理由で書いた通りです。トルコは2000年頃から、織物・絨毯等の軽工業から、重工業への転換を図ってきました。
重工業の中でも特に成長著しいのが自動車産業です。現在、トルコの自動車輸出は年間100億ドル以上にのぼり、外貨を獲得するための重要な手段に位置づけられています。
輸出先の大半は欧州圏で、輸出量の8割を担います。一方の国内でも、現在の自動車保有割合は全体の1割程度であり、今後の内需が期待されます。これらの外需と内需を見越し、日本のトヨタ・ホンダをはじめ、ベンツ、フォード、ルノーなどの名だたる自動車メーカーがトルコに生産拠点を構えています。
その一方で、産業の成長を阻害する要因もあります。エネルギー問題です。
トルコは、エネルギーの供給をほとんどを輸入に頼っています。エネルギー自給率は30%程度で、残りはロシアの天然ガスやイランなど中東諸国からの石油輸入に依存しています。結果、自動車の生産量の増加とともに、経常赤字も増えるというジレンマを抱えています。
上記の通り、工業を振興するに当たって、エネルギーの供給問題は切っても切り離せない問題です。このため、トルコは産業を成長させるために、いくつかのエネルギー対策を講じています。
トルコのエネルギー対策
トルコは、エネルギー対策として、ざっと以下のような政策を進めています。
- 原子力発電所の計画
- エネルギーパイプラインの建造
- 自国での石油・ガス開発
各々の項目について、詳細を見ていきましょう。
原子力発電所の計画
先日のエルドアン首相の訪日があったように、トルコは日本の原子力技術にラブコールを送っています。
ご存知の通り、原子力発電所は石炭・石油を必要としません。現在、トルコには1基のみ原子力発電所がありますが、これを増やす計画があるようです。実現すれば、ロシア・中東からのエネルギー資源依存の現状から、脱却することができます。
ちなみに、トルコに原発の需要を見込む国は、日本だけではありません。フランスも原子力推進大国として有名な所です。 実際、過去にはフランスのオーランド首相(当時)もトルコを訪問し、原子力技術に関して協力を提供する旨、明らかにしています。
エネルギーパイプラインの建造
外務省の「わかる!国際情勢~トルコ」によると、トルコはエネルギーパイプラインのコアカントリーの座を狙っているようです。
トルコは中東・ロシア~ギリシャ・ブルガリア等EU圏の間に位置しています。このため、中東・ロシアからのエネルギーラインを最短距離で繋ぐには、トルコを経由してパイプラインを通さざるを得ません。結果、トルコがエネルギーラインのコアカントリーとして、地の利を生かすことができるのです。この点、欧州へのエネルギー供給が続く限り、主導権を握り続けることができそうです。
自国での石油・ガス開発
トルコは、2002年頃から黒海における石炭・ガス開発を進めています。
詳しくは、後述しますが、ここに大きな投資妙味があります。
以上のように、トルコは現在でも、エネルギー対策を続けています。
ただ、実は将来的にもっと大きなイベントが控えています。
- なぜトルコがエネルギー自給率の低い国なのか?
- 将来、何が期待できるのか?
その答えは、トルコの歴史的背景にありました。
ローザンヌ条約とトルコのエネルギー事情
時を溯ること、第一次世界大戦。トルコは、連合国に敗戦しました。この敗戦に伴い、トルコが結んだ条約がローザンヌ条約です。
ローザンヌ条約の内容は、ざっと以下の通りです。
- トルコの領地縮小(イギリス・イタリア等へ領土割譲)
- トルコの関税自主権を回復
- ギリシャとトルコの住民交換等々
特に、1.で割譲された領土には、現在問題とされているキプロス半島も含まれます。この頃から、歴史的問題として存在していた訳です。
ただ、実はこれ以外に明文化されていない条項が存在します。それが、地下資源の開発禁止という項目です。
この項目は、条約に明文化されない密約であったようです。具体的な内容としては、「条約締結時から見てその後100年間、地下資源を開発しない」という約束であったとされています。トルコはこの条約を律儀に守っているためか、最近まで資源を新たに採掘してきていません。結果、この条約がトルコのエネルギー事情が芳しくない原因となっています。
ただ、トルコの周辺(黒海や中東)は石油が豊富な場所であることを考えると、地政学的にはトルコもエネルギー産出国になってもおかしくないはずです。実際、同国の石油公社が調査を進めていて、石炭・石油の埋蔵量があるとの見解を示しています。この点、エネルギー自給に対して、将来的な見通しがあります。
2023年の条約満了に向けて
以上の通り、トルコは埋蔵量がありながらも、地下資源には手を付けられない歴史的背景がありました。このため、現在でもエネルギー供給の70%以上を海外からの輸入に頼り、産業の成長を阻害する原因となっています。
ただ、気づかれたでしょうか?条約が結ばれたのは、第一次世界大戦後の1923年です。1923年に結ばれた条約が、100年後の2023年に期限を迎えます。
前章で触れた黒海の石油開発は、この2023年に向けての取り組みであろうという訳です。埋蔵量についても石油公社の調査結果として、「2023年から40年間、トルコのエネルギーを自給することができる」との見解が示されています。さらに、20台人口の多いトルコの人口ピラミッドを考慮すると、この頃に人口ボーナスが発生することが分かります。ネットの不確定情報ではありますが、トルコ国民はこの2023年を強く意識しているとの話も聞きます。
つまり、2023年にトルコの黄金期が訪れるであろうことが予見でき、先行投資の妙味が生まれる訳です。
今年2014年まで下落が続くトルコリラですが、長期的に見ると、このような将来的希望があることが分かります。今後10年の成長を見越して、トルコリラを積み立てる。そんな投資も面白いのではないでしょうか。
という訳で、今回はローザンヌ条約を軸にトルコのエネルギー事情を扱ってみました。弊サイトではトルコリラのFX情報を取り扱っています。興味のある方は、是非とも関連記事を併せてお読みください。