FX会社の間で異なるスワップポイントの差を利用し、スワップポイントをタダ取りする手法が知られています。呼び方は様々です。サヤ取りもしくは異業者両建て、スワップアープなど、いくつかの呼び名が知られています。いずれにしても裁定取引の一つに分類されます。
この裁定取引は比較的安全性の高い戦略ではあります。しかし、100%完全な手法など存在せず、当然ながら失敗のリスクも抱えています。そこで今回は、こうした裁定取引で起こりうる失敗パターンについて分析したいと思います。
スワップポイントのタダ取りも失敗するケースがある
まず、スワップポイントのタダ取りで起こりうる失敗パターンを紹介しましょう。大きく分けて、以下の2つです。
- ロスカットに遭ったために両建てが解消されてしまう。
- スワップポイントの差額で利益が出ない
前者は、一方の損失が膨らみ過ぎてロスカットに遭うケースです。ここで生じる損失はスプレッドコストです。要は、再度ポジションを建て直すために必要な取引コストですね。まあ、両建てが解消されても相場が一方向に進めば利益になることもありえます。しかし、それは本来のサヤ取りで目的とするところではありません。
後者は、裁定の機会が消滅してしまうケースです。異業者両建ては、FX会社の間で生じているスワップポイントの差額を利用して利益を上げます。この差額がある状況を「裁定の機会がある」と表現します。
スワップポイントの差額が縮小すれば裁定の機会が消滅し、場合によっては損失を積み重ねることになる訳ですね。じわじわと効いてくるので、実はこちらの方が厄介かも知れません。
関連記事:トルコリラ両建てのスワップ裁定取引【FXサヤ取り】
異業者両建てで失敗する3パターン
さて、こうした失敗を招く原因には、根本的に3つのパターンが考えられます。以下には、それぞれの詳細と対策を述べていきます。
メンテナンス不足
まず考えられる理由が単純なメンテナンス不足です。
異業者両建てを行なうと、一方のFX口座では利益が出る反面、もう一方の口座では必ず損失が出ます。この損失を抱えた口座は、常にロスカットの危機をはらんでいます。ですので、利益が出ている口座から損失が膨らむポジションを持つ口座に資金を移動させてやらねばなりません。
メンテナンスを怠った場合、ロスカットが待っています。ロスカットに遭った場合は、再び建て玉を建て直す必要があります。ですが、その際にはスプレッドコストを支払わねばなりません。トルコリラのような高金利通貨のスプレッドコストは往々にして高額ですから、ロスカットの発生回数が増えるほど、運用利回りが悪化します。
ロスカットに遭わないために必要な対策は単純明快です。毎日の相場をウォッチし、必要に応じて資金移動をしてやることです。特にネット銀行を介して資金を移してやると即日決済なのでロスカットを回避しやすくなります。
この辺の話は、異業者両建てのロスカット回避(1)に書いた通りです。
単純な話「メンテナンス作業を怠ると相場の変動によってロスカットが発生しますよ」ということですね。これが外貨預金や投資信託と異なる点です。ほったらかしルールは通用しません。何よりも、口座のメンテナンスという基本ルールを頭に叩き込むことが第一の対策です。
余裕資金の不足
ロスカットに遭わないために必要なことの2つ目は、資金に余裕を持たせることです。
例えば、2018年現在のセントラル短資FXでは、トルコリラを10,000通貨持つために最低でも30,000円程度の資金が必要です。ですが、この金額は飽くまで”最低限必要な”資金です。実際には、為替相場が1円、2円動いた程度ではロスカットされない程度の余裕資金が必要です。
そのため、本サイトでは最低でも以下の金額を割り当てることを推奨しています。
口座 | 必要証拠金 | 余裕資金 | 預入金合計 |
---|---|---|---|
買い持ち口座 | 5万円 | 3万円 | 8万円 |
売り持ち口座 | 5万円 | 3万円 | 8万円 |
ネット銀行 (資金移動用) |
0万円 | 4万円 | 4万円 |
計20万円 |
余裕資金を減らせば、一見、運用利回りは上がるように思えます。しかし、ロスカットに遭えば、数日分のスワップ金利が吹き飛びます。もし、あまりにもロスカットにかかる回数が多いようなら、余裕資金と投入資金の割合を見直す必要があります。少なくとも、建て玉を建てる際は余裕を見ながら徐々に積み増していくと安全にレバレッジを上げることができます。
FX会社選びの失敗
前述の通り、異業者両建てのトレード手法には日々のメンテナンスが必要であることをお話しました。しかし、日々の相場をウォッチしていても、失敗に陥るケースがあります。その原因は、そもそもがFX会社の選び方から失敗しているケースです。特に考え付く所では、外資系FX会社の罠にはまるパターンでしょうか。
例えば、トルコリラの買い持ち口座に関して、本サイトではセントラル短資FXの買い持ち口座を推奨しています。これは、スワップポイントの高さもさることながら、同社が長年に渡ってトルコリラ円の扱いを続けているためです。長い実績に裏打ちされた安定感があるのです。
関連記事:トルコリラ円の高スワップを狙うならセントラル短資FX
一方で、外資系FX会社はスワップポイントが大きく変動することがあります。
確かに、表面上の金額だけ見るとサクソ〇ンクやFX〇Mなどは優秀かも知れません。しかし、特にサクソ〇ンク系の証券会社は、自社の都合で簡単にスワップポイントを引き下げることがあるんです。為替レートの変動次第で、突然スワップ0に調整される事態も珍しくありません。
結果として「気付けばトータルでマイナス利益だった」という事態を招きます。裁定の機会が解消されてしまうという失敗パターンですね。サヤ取り用のFX会社には、金利の高さと同時に安定感も求められます。相場も金利も変動しない。これがスワップポイントタダ取りにとっての好条件です。
関連ページ:トルコリラ扱い各社のスワップポイント一覧表
おわりに
以上のように、FXの異業者両建てで失敗するパターンを分析してみました。
異業者両建ては低リスクで安全性が高い手法です。しかし、FX取引である点は他の手法と変わりがありません。十分なリスク管理が必要です。
詰まる所、重要なのはルール作りであり、最後の砦になるのは、その規律を守るメンタリティーなのかもしれません。
FXのサヤ取りに興味のある方は、関連記事もご覧ください。