トルコリラは2月初週に必ず大きな買いが入る。そんなFX法則を見つけたので解説します。
相場には「アノマリー(特異日)」と呼ばれる特殊かつ季節的な需給要因が存在します。確認した限り、トルコリラでは8年連続で2月に大きな買いが入りました。より具体的には「1月の最終日から2月3日に掛けて大幅なリラ買いが現れる」という法則です。過去のチャートデータに基づき検証を行いました。
背景には機関投資家による機械的な買い需要があると推測します。どんな下落相場にも必ず現れるリラ買いの謎。その詳細を分析してみました。
悪材料でもリラ買いの謎
最初に事のあらましから。この記事を書いているのは2017年2月。実は、1月の最終週からトルコリラに非常におかしな出来事が起ったのです。簡単に言って、悪材料ばかりなのに大幅なリラ高となる矛盾した値動きです。
- 市場の期待を裏切りトルコ中銀が金利据え置き
- フィッチ社がトルコの格付けを引き下げ
- 消費者物価指数が上昇(インフレ悪化)
悪材料は以上の通り。一方では、中銀が為替介入を始める、米経済の見通し軟化といったプラス材料もありました。ただ、いずれもインパクトには欠ける要因です。加えて、マイナス材料の後半部分は新しくでた材料(ネガティブサプライズ)であったことを考えれば、当然のリラ売りトレンドであることが予想されました。
ところがトルコリラは予想外の値動きを見せます。以下はドル対トルコリラの週足チャートです。USD/TRYのチャートですので、下に行くほどリラ買いです。
ご覧の通り、1月最終週はナイアガラ級の大変動。値幅は1000pips以上に及び、下落していたトルコリラの為替レートを一気に押し戻す値動きとなりました。いくらなんでも、やりすぎです。
データ検証~2月のトルコリラ
さすがにおかしいと思い、過去のデータを検証した。その結果をまとめようというのが今回の内容です。過去のデータとは8年分のUSD/TRY日足チャート。OANDA Japan MT4からヒストリカルデータをエクスポートし、FX検証ソフトのForex Tester 3にインポート。過去の値動きを洗い直してみました。
検証した結果気付いたことは「どうにも1月末日から2月3日に掛けて、例年おかしな買いが入る」という事実です。これだけでは主観が混じります。そこで、客観的なデータに焼き直してみました。データを集計・作成したのが以下の表です。
ご覧の通り、ドルトルコリラのチャートは1月最終日から2月3日に掛け、必ず1%~2.5%程度の下落が起きていたのです。1000pipsという今年のデータから見ても、相当な値動きです。しかも、その値動きは直近のトレンドに関係なく、なおかつ8年連続して発生していました。
特徴的なのが、2011年に発生したリラ買いの値動きですね(上記チャート)。この頃、前年の11月に発表された米国の第2次量的金融緩和(QE2)の煽りを受け、年初からドル買いリラ売りのトレンドが加速していました。ボリンジャーバンドの2σウォークが発生する強烈なリラ売りトレンド。しかし、それに反抗するかのようなリラ買いの値動きがありました。
気付きが無ければ「調整」の2文字で判断してしまいがちです。しかし、視点を変えれば「完全にトレンド無視の異常な値動き」だと気付かれると思います。
買いの背景にインデックスファンドの影
前述の検証をした結果に得た結論。それは「アノマリー(特異日)」だという判断です。深堀りして考えた所、機関投資家による月末の特殊な買い需要があったのだとという判断に至りました。業界用語で「月末のフロー」とか呼ばれるもので、金融商品は特定の金融機関による機械的な売買が行われることがあるのです。
今回のアノマリーの背景には、恐らく新興国株式市場のインデックスファンドがリバランスを行ったことがあると推測します。月末からの値動き、2月という時候、トルコ株の大幅高を伴った、トレンドを無視した買い、大陰線を伴う雑な値動き、そして今年は新興国通貨の全面高。これらの状況証拠を根拠とした仮説です。いずれの特徴も、インデックスファンドのリバランスによる買い入れのそれと一致します。
参考:MSCI指数の構成銘柄入れ替えに便乗(管理人の株ブログから)
msciが買い入れの主体であるとは判断することはできません。飽くまでインデックスファンドを扱う金融機関の一例であり、同業のisharesもトルコ含む新興国ETFを扱っています。ただ、ここで分かれば良いのは「どこかしらの金融機関が買いを入れた」「その結果、トルコリラは2月初旬に買われる傾向があるのだろう」ということです。新年1月に組成されたファンドが実需の買いを入れる時期だと考えると辻褄が合います。ただ、事実を確認することは不可能に近いとも思います。
もっとも、相場の世界ではこ特殊な需要が発生することは事実です。実は株式の世界では昔から知られています。例えば、日経TOPIXの構成銘柄は毎月入れ替わる訳ですが、それに伴って採用銘柄の株価が上がったりもします。相場を動かすのは、ファンダメンタルズ、テクニカル分析、そして需給要因です。今回は改めて、需給がチャートを支配する場面に遭遇したと実感しました。
その後のトレンドに影響なしか
最後に余談として、特殊な買いが入った後の傾向について語ってみましょう。結論から言うと「ほとんど関係しない」です。2010年からのチャートを使ってバーチャルトレードをしてみました。しかし、どうにも前述のリラ買いが相場の仕掛けとして機能した様子は見られませんでした。むしろ、買いがあった後でも元の水準に戻ってしまうという印象を持っています。飽くまで、管理人個人の主観的な判断によるものです。
今回の検証には、Forex Tester 3を利用しました。検証ソフトに興味のある方は、購入してみてもいいかも知れません。価格は1万円強しますが、それでも検証ソフトの中では安い方です。株式の検証ソフトなんて、10数万するものがザラにありますので。
参考:ForexTester2(フォレックステスター)のFXバックテスト機能
上記の記事はVer.2のものです。現在はVer.3に改訂されましたが、使い方はあまり変わっていません。まあ、それでも管理人は再入手しました。今度、いくつかのネタを記事にしたいと考えています。