コラムとブログ PR

トルコリラ為替レートのリスク@2016年夏

本ブログは記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回は2016年7月現在の為替リスクを洗い出したいと思います。ピックアップしたリスク要因は、トルコ国債の格下げ、企業の投資敬遠、円高トレンド、ユーロ下落の連れ安です。クーデター発生に伴う経済的損失は直近で織り込んでいるものと判断しました。

クーデター後のトルコリラは落ち着きを取り戻してきています。もっとも、そこから波及するリスク、別のリスク要因がくすぶっています。トレーダー各位に、こうしたリスクが起こりうる可能性を認識/マネジメントして頂きたい旨で書き上げました。

以下に詳細を記します。

クーデターでトルコリラ33円

先日、日本のメディアも騒がせたトルコ軍のクーデター未遂事件。トルコ軍の一部がクーデターを企て、多数の死傷者が出る事態になりました。市場は内政混乱の報に反応し、トルコリラは最安値を更新して33円まで暴落。2週間たった現在、ようやく為替レートに落ち着きが戻ってきています。

トルコリラを扱うFXトレーダーとしては、こうした下落局面で基盤となるポジションを仕込みたいもの。確かにクーデターに関わる直近のハザードは既に為替レートに織り込まれ、トルコリラの下落トレンドは終焉を迎えつつあります。安値を拾うという意味では、買いを仕掛けるにはいい頃合いでしょう。実態経済のハザードが為替レートに織り込まれれば、市場は将来の材料を探しに向かいます。

ただ、将来の材料とは言っても良い材料ばかりではありません。直近ではクーデターに伴う材料は織り込まれたものの、市場が認識していないハザードも想定されます。付け加えれば、期待ばかりで実態の見えぬ日銀のアクションに対し、円高トレンドもトルコリラの対円レートを考える上では外せません。

今回は「市場が織り込んではいないけれども想定しうるリスク」をピックアップしてみました。リスクマネジメントも併記します。トルコリラを買う際のリスクマネジメントに役立てて頂ければ幸いです。

トルコ経済に起こり得るリスク

簡単にリスクという言葉の説明をしておきましょう。リスクには「将来に起こり得る可能性のある損失」という意味があります。セットで覚えておきたい言葉が「ハザード」です。ハザードとは「リスクが起きた際に顕在化する具体的な損失の形」のことを指します。

クーデターの一件を例に出すと、経済・為替のリスクには「投資資金が国外に流出するリスク」や「トルコの生産性が減退するリスク」が挙げられます。これらの事柄は、すべて現段階では発生していないものであることがポイントです。

為替レートの上下で特徴的な点は、現実の為替レートには顕在化していないリスクも織り込まれることです。現段階では、クーデターに伴う将来の損失が為替レートに織り込まれています(いわゆる織り込み済みの状況)。ただ、織り込まれる材料は市場参加者が認識しているものに限ります。逆に言えば、認識されていないリスクが顕在化すれば、それだけ為替レートは下落します。

そこで以下には、管理人がまだ認識されていないと判断するリスクを解説していこうと思います。

格下げによる資金逃避

スタンダードプアーズ(以下S&P)が国債の格下げを行いました。ドル建て、リラ建て国債共に「投資適格級」から「投機的水準」への引き下げです。クーデター後、トルコリラレートが戻しを試す場面での出来事です。以前から格下げは噂されていましたが、クーデター事件が決定打となりました。

リスクとして問題となるのは、投機的水準への移行に伴う国債ファンドの解散です。ポリシーとして「投資適格級である限りファンドを継続する」という条項が合った場合、投機的水準への下落で解散が検討されます。従来は投資を行ってきたファンドが総数的に減少する可能性が出てきました。

乱暴な言い方をすれば、ファンドというものはリラの為替レートが上下しようがリスクが出ようが、顧客からの預かり金があれれば常に一定の資金を買い付けに回します。当然ながらファンドの解散が増えれば、その分の買い付け資金が剥離します。このハザードの程度はまだ織り込まれていないものと考えます。

海外企業の投資意欲減退

実需のリラ買いでも投資資金の剥離が懸念されます。トルコから見て外資企業の現地撤退、もしくは参入を敬遠する動きです。これは治安レベルの低下に伴って生じ得ます。トルコはまだ治安レベルを引き下げていませんが、渡航禁止リストにピックアップする企業も総数的には増えることでしょう。

トルコの工業は外資によって支えられているといっても過言ではありません。この点、外資誘致が滞ればGDP成長率にも悪影響を及ぼします。将来の成長性を期待されてのトルコ買いですので、投資意欲の減退にまで波及するかも知れません。

円高傾向の継続

対円レートでのトレードを考える場合、円高傾向にあることを忘れてはいけません。直近では追加緩和の期待から、短期の円安傾向に傾いていますが既に円安のピークが過ぎています。日銀の追加緩和が期待はずれに終わると、再び円が買われます。

最近は忘れられていますが、チャイナリスクが消化されていないことも懸念事項です。世界的に見てリスクオフ傾向が高まると、円は安全通貨として買われる傾向があります。特に、ドルは高止まりで、ユーロ・スイスフランは微妙という状況では、消去法的に円が買われやすくなります。円が買われれば、相対的にトルコリラ円レートは下落します。

ユーロ下落の連れ安

先日のBrexitで一番の被害を被ったのがユーロ圏です。イギリス経済だけの問題と思われがちですが、離脱される方の対応の方が重要という問題になりました。イギリスのEU離脱で一悶着あれば株式は下落し、イギリスに続く離脱国が出るリスクも織り込みつつあります。必然的に通貨ユーロの対外レートも下落傾向にあります。

ユーロが下落するとトルコリラも下落する傾向にあります。貿易の面で結びつきが強いためです。実需での売買を考えた場合、ユーロが下落すれば欧州から見てリラは割高になります。結果として、リラ買い意欲は減退します。投機筋から見ても、ユーロが下落したからリラも売ってやれという感覚が芽生えそうです。

ユーロとリラにはソフトな連動性があります。リラ対ユーロの間では変動が続くでしょうが、気が付けば対ドルでは下落していたという事態がおきそうです。

リスクマネジメント色々

以上の通り、トルコリラを買う上でのまだ見ぬリスクを妄想してみました。別に買うなという訳ではありません。読者の皆さんがリラ買い好きなことは十分承知してますし、管理人もしばらくは相場が落ち着くと考えています(でもクーデターでは思いっきり売りました。ゴメンナサイ)。

リスクを想定する。リスクがあれば対処・マネジメントする。今回言いたかったことは、このことです。という訳で、以下にリスクマネジメントの方法論を述べたいと思います。

レバレッジ調整

短期にしろ、長期投資にしろ、レバレッジの調整を考えましょう。具体的には、ポジションの量を調整する必要があります。例えば、長期投資でレバレッジ2倍とするなら、買ってよいトルコリラ円の量は下記の通りに計算できます。

10万円を一つの単位として

レバレッジ2倍であるから、投入資金は以下の通り。
100,000(円)×2=200,000(円)

為替レートを1トルコリラ=35円として、ポジションの量を計算する。
200,000(円)÷35(円/リラ)=5,714(リラ)

つまり10万円に対するレバレッジ2倍のポジション量は約5,000通貨。
(参考:レバレッジ1倍で3,000通貨。レバレッジ3倍で8,000通貨。)

あとは10万円を単位として、資金の量に比例させれば計算しやすくなります。

[PR]セントラル短資のトルコリラが1,000通貨単位の取り引きに対応しました。これで細かいリスク調整や少額資金のリスク管理がしやすくなります。口座開設はこちらのリンクから。

円高ヘッジ

円高のヘッジとして、トルコリラ円の買いと共にドル円やユーロ円を売る方法があります。個人的にはユーロ安に便乗して、ユーロ円の売りヘッジが良いと考えます。以下にユーロ円の売りポジションの量を計算します。

先の10万円単位のトルコリラ円買いに対して。

ヘッジすべき購入資金はレバレッジ2倍で200,000円。
ユーロ円の為替レートを115ユーロ/円として、売るべきユーロの量は以下の通り。
200,000(円)÷115(ユーロ/円)=1739(ユーロ)

レバレッジ2倍の10万円分トルコリラに対してユーロ円売りは約2,000通貨。
(参考:レバレッジ1倍で1,000通貨。レバレッジ3倍で3,000通貨。)

厳密にはぴったりヘッジはできませんけども、ヘッジ資金なので概算で良いと思います。上記の例では円高サイドに計算して、ヘッジポジションの量を切り上げています。

小さく仕込んで利益で買い増し

最後に買い増しについて。ケースバイケースになりますが、基本的には小さく買いを始めて徐々にポジションを増やすという資金管理を管理人は行っています。下落局面のナンピン買い増しではなく、利益が出た分だけ買い増すという管理手法です。

ここら辺のポジション調整の仕方にはいくつかのパターンがあります。以下の画像は管理人が以前に書いたノウハウレポートから。大分類として、管理人が勝手に名前を付けました。

タイプ別ポジションの増やし方タイプ別ポジションの増やし方
FXダイレクトプラス

買い増しの基本は「既にある利益をリスクに晒す」ことです。ポジション量は相場が下落して損切りになっても損失0で収まる範囲が理想ですね。こうしたポジション管理もリスクマネジメントには重要です。

※本記事の内容は筆者の主観的憶測に基づくものであり、将来に渡る事実の保証をするものではありません。FXは自己責任です。FXのトレードにはご自身の責任で当たってください。