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GDP成長率かインフレ抑制か~トルコ経済の歩む道

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今回はトルコ経済の現状をまとめたいと思います。

先日、トルコのGDP成長率が発表されました。結果は良好。トルコ政府の思惑通りに、非常に高い経済成長率を実現することができました。しかし、気になる数字がインフレ率です。消費者物価指数が前年度比二桁増加し、インフレの程度が悪化しています。

以下には、こうした経済指標の数字を交えながら、トルコ経済の現状と展望をまとめたいと思います。

トルコ経済の現状

最初に冒頭に記載した、トルコ経済を示す指標についてまとめておきましょう。

トルコ経済は現在、非常に好景気を表す数字を示しています。具体的にはGDP成長率が前年度比で5.11%増加。トルコ政府の打ち出す5.5%の成長率に届かないまでも、新興国らしい高い成長率を実現しています。

少しだけ気になる数字が、高止まりしている失業率です。トルコの失業率は11.2%と前年度の10.9%よりもやや悪化しました。2000年から2010年あたりまでの好景気の頃は一桁代に抑えていましたから、あまり良くない数字ではあります。もっとも、隣国シリアで内戦が続き、そのとばっちりを受けていたことを考えれば、まずまずの数字と言ったところでしょうか。

トルコ2017年の経済指標

一方で、非常に問題視されている数字があります。インフレ率です。IMF推計では、インフレ率を示すCPI(消費者物価指数)が10%を超えてしまっています。かなり危険な水準で、海外の経済紙では、この悪化するインフレを理由に投資を控える声が出ています。あわや、オイルショックのようなスタグフレーション(経済停滞×インフレーション)を引き起こすしそうなところですが、先に示した高い経済成長率と内需の高さが景気の停滞を押し留めている現状があります。

参考:インフレ率から読み解く政策金利と為替レート

インフレが経済停滞の要因になる理由

トルコ経済の現状は「インフレながらも経済成長を続けている」とまとめられます。では、このままインフレを放置して経済成長を続ければよいのでしょうか。答えは、当然のNOです。

トルコがインフレ率を抑えるべき大きな理由として、対外債務が大きい国である点が言えます。トルコという国は、基本的に海外から資金を集めて経済を回している国です。おそらく、読者の中にはトルコ国債あたりを運用している方もいるのではないでしょうか。インフレが進んでリラの貨幣価値が下がると、その分、対外的な債券の価値も落ちてしまうのです。

対外債務がバランスシートを悪化させる

経済の観点からもう少し具体的に言うと、企業のバランシートが崩れるという問題もあります。企業もまた、ドルやユーロ建てで社債を発行しています。社債とは言え、要は借り入れ金ですから、インフレでリラの価値が落ちると支払い金利の負担が増えます。その場合、さらに社債を発行するようだと借金が膨らみ、悪い形でバランスシートが拡大します。

歯止めを掛けなければ、最終的にはどこかで破綻するシナリオを進みます。まあ、実際問題としては、悪い指標を見た投資家が徐々に撤退し、債券や株価が下がります。回りくどく書きましたが、これがインフレが経済を停滞させる根本的なメカニズムです。

トルコ中銀の取るべき施策

こうした悪循環を避けるべく、国策として経済の舵取りを担うのが中央銀行です。トルコの場合、トルコ中央銀行(TCMB)が経済政策を担っています。ただ、近年はこのトルコ中銀がうまく機能していない現状があります。

理由のひとつは、トルコ政府からの利下げ圧力によるものです。前述の通り、トルコ政府は5.5%経済成長を目標に掲げています。その手段として、金融緩和策をトルコ中銀に求めているのです。実際、その圧力に屈して利下げを実施した過去もありますし、前中銀総裁のバシュチュ氏は政府の圧力に抗議する形で辞任しました。簡単に言って、手段を選ばずに経済成長を選択した結果、インフレ対策がおざなりになっている状況がありました。

当然ながら、トルコ中銀の取るべき施策は“大幅な”利上げです。利上げは金融引き締め策ですから、経済成長は鈍化することでしょう。ただ、インフレを放置すればどういった事態になるかは、前述した通りです。

実際、今年2018年に入ってから政府と中銀のトーンが少し変わってきています。政府サイドからは、大統領経済顧問のセミル・エルテム氏、中銀からは新総裁のムラト・チェティンカヤ紙が利上げを匂わせる発言をしています。こうした声が実現すれば、トルコに資金を預ける投資家にとって安心できる材料に変わることでしょう。

※本記事は、過去及び将来に渡る事実を約束するものではありません。また、筆者独自の主観を多分に含む文章です。投資は自己責任です。投資判断はご自身で行ってください。