今回は新興国通貨トレードの重要指標であるインフレ率について解説したいと思います。経済指標の読み方として、CPI(消費者物価指数)の解釈を交えます。
トルコと言えば、かつてハイパーインフレで経済が破綻した国です。それ故、現在でもインフレ率は経済の健全性を示す最大材料であり、同時に中央銀行にとって最大の懸念事項です。
インフレが進めば、中銀は経済の健全性を保つべく利上げにより貨幣価値を高めるという施策を行います。その場合、スワップポイントレートの向上により、投機筋のキャリートレードが引き付けられてリラ高となるメカニズムが発生します。
ここでは、インフレ率の読み方から利上げ観測、さらに利率と為替レートの相関性について解説したいと思います。ちょっとややこしい話になります。
インフレ率の経済指標CPI(物価指数)
最初に経済指標の読み方として、CPIという数値を解説しましょう。
CPIとは消費者物価指数(Consumer Price Index)の略です。各国の消費者が実際に身の回りの商品を購入する物価の目安を示します。
家計から購入される主要品目の小売り価格から算出され、物価の割安感・割高感を計る指標とされています。
主要品目の選び方を絞った「コアCPI」という指標もあります。
新興国投資でCPIが重要視されるのは、インフレ率を割り出す指標であるためです。CPI(=消費者物価指数)の上昇率はインフレ率そのものを示します。下式で計算されます。
インフレ率=((今回CPI)ー(前回CPI))/(前回CPI)×100(%)
CPIの指標発表で前回より高い数字が出れば、インフレが進んでいることを意味します。インフレ懸念のある新興国の場合、このCPIという指標が高ければマズイ訳ですね。トルコの場合、GDPや雇用統計と同じタイミングで発表されます。
利上げ観測から中銀発表の発表まで
なぜCPIやインフレ率の解説をしたかというと、これらの指標が政策金利の引き上げ(=利上げ)を連想させる指標であるためです。
平常時であれば、インフレ率の上昇に伴って中銀が通貨防衛のための引き締め策を敢行します。政策金利の引き上げです。トルコの場合もインフレ率の上昇に併せて政策金利を引き上げています。
つまり、インフレ率が上昇すると金利が引き上げられる可能性が高まるのです。実際、トルコでは過去に以下のような推移で利上げが実施されました。
- 2015年10月5日:トルコCPI発表→7.95%(前年度7.14%=インフレ率高い)
- 2015年10月後半:市場に利上げ観測が出回る(利上げが噂される)
- 2015年11月21日:トルコ中銀政策発表にてバシュチュ総裁が利上げを示唆
- 2015年12月22日:トルコ中銀政策発表にて政策金利を引き上げ
インフレの発覚から実際の利上げまでは結構な期間が空きましたが、結果的にインフレ率の上昇が利上げに繋がった事例です。このようにインフレ率は利上げ予想の根拠として機能するのです。インフレ率を見れば利上げの有無が予想できる。という訳で、新興国のCPIの指標は重要なファンダメンタルズファクターとなっております。
政策金利の引き上げで為替レートはどうなるか?
ここまでは、利上げと利率ばかりを語ってきました。ここからは実際の為替の値動きで考えてみましょう。
過去に調査した際の結果から、どうやらトルコリラは政策金利の引き上げに応じて為替レートも上昇する性質のある通貨であると考えています。以下のチャートがその根拠となるデータです。政策金利の推移と為替レートの相関関係を示しています。
相関関係を因果関係にするための背景を探ると、どうやらヘッジファンドのキャリートレードがあるらしいという推測に辿り着きます。キャリートレードというのは、要はスワップポイント+差益の両取りを狙うトレード手法で、高リスクを好む投機筋によって運用されます。金利が上がればキャリートレードの旨味が増し、投機筋の資金が集まって通貨レートが上がるという仕組みですね。以下の記事はご参考までに。
余談ですが、ヘッジファンドは空売りで通貨を暴落させるとの憶測が一般にはあるようです。しかし、それは誤解です。というのも、ヘッジファンドの多くは自らのルールで「買い」でしか市場に参加することを許していないからです。暴落時には、彼らは単に手持ちの建て玉を手放しているだけで、積極的な売りをおこなうファンドはごく少数です。実はヘッジファンドもリラ高を望む参加者の一人であることは頭に入れておいてよいと思います。
利上げのニュースとFXの売買判断
最後に、利上げ前後のニュースの読み方について解説しましょう。前述した通り、市場の利上げ観測が高まると通貨レートは利上げを織り込んだ値動きで反応します。トルコリラの場合、利上げ観測が高まると基本的には為替レートも上昇する傾向があるようです。
トルコ中銀は「翌日ものレポレート」という金利を操作します。指標カレンダーでこのキーワードを探してみましょう。キーワードがニュースで語られ始めると、通貨レートの上昇が始まります。過去の傾向では、利上げ発表の後に遅れて通貨レートが上昇し始める傾向が多いようです。
ただし、利上げが空振りに終わった場合は別です。利上げ期待が高まった所で利上げの話題がスルーされると、市場は肩透かしを食らいます。この場合は、通貨レートが急落します。トルコリラの場合、政策金利に政治の問題が絡むので大方のアナリスト予想がはずれる場合も多々あります。中銀の政策金利発表前はポジションを持たない方が無難です。
ニュースに基づく売買判断
そんな訳で、利上げに関係するニュースと為替市場の変化をまとめてみましょう。管理人個人の経験則に基づきます。
トルコリラの場合、市場の利上げ観測が高まった局面では以下のような売買判断にまとめることができると考えます。基本は期待の買いですが、事実売りの安値にも投資妙味があると考えています。
- 中銀が利上げを示唆したり、市場の利上げ期待がたかまる⇒期待の買い
- 中銀発表前にポジション調整が始まる⇒博打を避けるための売り
- 中銀の利上げ発表後にセルザファクトで下落⇒安値で再び買い
トルコリラは、とかくネガティブサプライズが多い通貨です。市場の見方が利上げに偏ったからと言って過度な期待は禁物です。利上げ後の投機資金が集まる段階で市場の動きに乗っかるという後出しのアクションが堅実な運用手法のセオリーだと思います。
という訳で、トルコリラの消費者物価指数(CPI)とそれに関わる売買判断を解説してみました。弊サイトではトルコリラに関するFX情報をお届けしています。興味のある方は関連記事も併せてご覧ください。