今回は1995年から始まるトルコリラ20年分のチャートを分析・総括したいと思います。
トルコリラと言えば、利回りの良さから長期間のポジションを保有する投資家が多い通貨です。しかし、過去を振り返ると必ずしも利益の出る時代ばかりではありませんでした。かつてはハイパーインフレに見舞われ、デノミネーションを実行するなど悲惨な歴史も経験しています。
しかし、一時的ではあるにせよ、過去にはスワップ運用で利益の出る時代もありました。そして将来的にもトルコを始めとする新興国には期待が掛かっています。再びトルコが投資対象として注目される時代も来ることでしょう。
トルコリラの売買で利益が出やすい時期はどのような時代か。そのヒントを探すべく、今回は20年分のチャートを元にして、時代の変遷を考察していきたいと思います。以下にはコメントを交えながら5年毎のチャートを示し、その時代背景を総括します。
尚、チャートの表示はデノミ後の新トルコリラ(TRL⇒TRY)で行います。
ハイパーインフレーションの時代【1995~2000】
まずは1995年から始まるハイパーインフレーションの時代まで遡って見てみましょう。かつては1トルコリラ=2,000円の価値があった時代です。それが大きなインフレに見舞われ、一気に価値を落とす様子が見て取れます。以下はチャートの推移です。
この時期の世界経済と言えば、世界中に渡る恐慌の時代です。米国では金融緩和を実行するも成果が上げられず、日本でも円高が進み成す術がない状況でした。特に日本ではバブルがはじけ、後の「失われた10年」が始まる絶望の時代です。
トルコリラも御多分に漏れず、不景気な時期を過ごしました。本当の国家破綻が噂された時代です。この頃から、トルコにとってインフレーションは最大の経済問題となりました。
ミレニアム前のFX業界は
FX業界はこの1990年代が黎明期です。アメリカでは1990年代中盤に初めてFX取引が行われました。しかし当時はインターネットがまだまだ普及していない時代。店頭取引が中心で、トルコリラの取引などはほとんどない時代でした。
日本でもFX取引が始まったのがこの時代です(1998年)。ただ、当時はまだまだ「怪しいもの」という認識で、少し前のビットコインのような扱いでした。一般投資家が気軽に取引できるようになるのはもっと後の話です。
トルコのデノミネーション前の時代【2000~2005】
トルコリラのデノミネーション前後にあったことに書いた通り、トルコは2005年にデノミを実施した国です。2000年のミレニアムから2005年までは為替レートは落ち着いているものの、トルコ経済にとってはまだまだ危機が懸念される時代でした。デノミを待つ間、中央銀行は何度かの利上げでインフレを抑えこむの必死で、トルコにとっては氷河期の時代でもありました。
ただ、世界経済は回復の兆しを見せ始めていました。アラン=グリーンスパンFRB議長が利下げを敢行し、その成果が景気に反映され始めた時代です。ITバブルと呼ばれたアメリカのドットコムバブルが台頭したのもこの時期でした。
結果的に見れば、このデノミ前の時期にトルコリラを保有していれば高金利と為替レートの安定感で大きな利益を手に出来た時代です。「皆が投資しないような時期にこそ買うのがベスト」という教訓を喚起させるような結果となりました。ただし、一般投資家がトルコリラを買うことができたかどうかというと、それは別の話です。
2000年代のFX業界を取り巻く環境
日本で初めてFX取引が認知され始めたのがこの時期です。新規のFX業者が次々と生まれ、賑やかな時代となりつつありました。
我らがセントラル短資FXが生まれたのもこの2000年代です。2002年に誕生し、その後の過渡期を過ぎた現在も事業を継続しています。ただし、トルコリラの歴史が日本で始まるのはまだ先の話。当時は米ドルやユーロ、ポンドが取引の中心でした。
2005年のデノミネーションとその後【2005~2010】
トルコは2005年の1月1日にデノミネーションを実施しました。旧トルコリラ(TRL)から現在の新トルコリラ(TRY)に移行し、通貨の刷新をしたのです。この政策が功を奏し、一時的にトルコリラは通貨価値を回復させます。
しかし、2008年にリーマンショックが勃発します。この余波を受けてトルコリラも下落。世界経済は再び暗黒時代に突入しました。もっとも、トルコリラに限っては一時的に回復を見せる時期がありました。キャリートレードの台頭です。
株や債券などの下落を受け、投資家達が新興国投資に殺到。BRICKsやMISTと言った新興国に期待が寄せられた時代です。結果的に見ても、この時期の新興国投資は儲かったので、歴史は何が起こるか分かったものではありません。
デノミ前後のFX業界は
当時のFX業界は規制の時代でした。違法業者やスリッページ詐欺などが跋扈し、FX業界の信用が失われた時期です。業を煮やした国が規制をかけ始めたのもこの時期です。
一般投資家にとっては、結果的にレバレッジ規制という足枷がはめられた時期です。現在のレバレッジ25倍という規制は、この時期から現在まで続いています。
2010年代にはミセスワタナベが台頭【2010~2015】
2010年から2015年に掛けての5年間はトルコリラの投資家にとって幸せな時代であったかも知れません。トルコリラの為替レートが非常に落ち着いていたからです。
そして、この時期に台頭していたのがミセスワタナベです。スワップ運用の黄金期で、豪ドルを始めとして南アフリカランドや豪ドルといった金利通貨が大人気となりました。一般投資家によるブログが多数、公開されていたのもこの時期です。管理人もこの時期にブログ公開を始めました。
世界経済はと言うと、日米欧の各国が金融緩和を始めた時期です。それまでは円高が一進一退。しかし、黒田総裁率いる日銀が大規模緩和を始めた結果、大きく円安が進んだ時代でした。もっとも、そんな各国の金融緩和策がトルコを苦しめる結果になると分かるのは、後の時代の話でもありました。
ミセスワタナベとトルコリラ
先に示した通り、ミセスワタナベの台頭でFX業界が非常に賑わっていた時代です。法の整備も進み、一般投資家が気軽にFX取引を始められる時代となりました。
日本でトルコリラの取引が始まったのもこの時期です。セントラル短資FXがその先駆けで、2013年にトルコリラの扱いをスタート。日本で初めて、トルコリラの売買を投資家達に提供し始めました。それまでは外資系FX会社を通じての売買しか取引手段がなかったのですね。
セントラル短資FXは現在でもトルコリラの売買を継続して提供しています。安定感が魅力でイチオシのFX会社です。興味のある方はご覧あれ。
2015年のトルコリラ暗黒時代【2015~】
最後が直近のトルコ暗黒時代です。シリア問題に始まり、デモが起き、クーデター騒ぎがあったのがこの3年間の動きです。トルコリラも大幅下落。トルコリラを保有する一般投資家にとっては受難の時代となりました。直近ではトルコショックが起き、多くの投資家達がロスカットの憂き目に遭いました。
トルコリラを10年チャートで振り返るに書いた通り、トルコリラの下落は多くの要因が混ざり合って起きています。シリア問題然り、先進国の金融緩和策然りで、トルコにとって国家的受難の時代となっていました。特に先進国の金融緩和策は世界的株高を促す一方で、新興国からの資金流出を助長しました。トルコのような外国資本に頼る国にとっては、非常に大きな痛手です。
まだまだしぶとい日本の投資家
トルコショックで多くの退場者を出した日本のFX業界ですが、まだまだ投資家達は健在のようです。管理人もまた然り。積み立て口座こそ失ったものの、短期のメイン口座は資金が残っています。ひとえにブログを通じて、日々の情報収集を怠らなかったことが即死を回避させたものだと自負しています。
また、FX業界でもトルコリラの投資家にとって追い風となる変化が現れています。スプレッドの縮小とスワップポイントの増加です。本来的にトルコのような新興国通貨はスプレッドが大きいのですが、流動性が高まったおかげで一昔前の豪ドル並みのスプレッドにまで狭まってきました。FX会社を選べばデイトレのような短期売買も可能となってきたのです。
トルコリラ各社のスワップポイント比較表が人気ページであることを見ると、日本のトルコリラ投資家がまだまだ元気なことが分かります。まあ、管理人は大きな運用はほどほどにして、堅実に積み立て運用することを推奨していることはここに書き留めておきましょう。
今後10年に渡るトルコリラの将来は
以上の通り、今回はトルコリラ20年分の歴史をひとつひとつ紐解き、分析してみました。最後に総括と参りましょう。
個人的に考察した結果を一言で表すと、やはりトルコリラは世界の金融事情に振り回されるということが言えます。これはここまで書いてきたトルコリラの歴史を見てもそうですし、直近の暗黒時代も先進国の金融緩和策に振り回された結果であると言えます。上がる時も下がる時も、短期的には個別要因が働くにしろ、長期的には世界の投資マネーがどの方面を向いているかでトルコリラの値動きが決まります。
では、今後10年の投資マネーはどこを向くのか?
管理人は新興国であると思います。先進国は現在こそ株高であるものの、既に金融緩和の効果は薄れつつあります。特にアメリカに至っては、今後10年は大規模金融緩和の副作用と闘わなければなりません。日本に至っては、まだデフレ脱却すら成しえていません。新興国から先進国への資金流出は既に底を打ったものだと考えています。
では、トルコリラは安心して保有できる金融資産か?
投資に安心などと言う言葉はありません。ただ、最大懸念であるインフレが多少進んでも、リラの通貨価値はそれほど下落しないと思います。トルコ中銀が利上げを実施したことですし、インフレ率はほどほどに抑えられると思います。
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当然ながら、トルコ固有のリスクが顕在化し、通貨リラが下落する状況は多分にあることでしょう。ただ、長期運用を試みるならそうした場面でこそ買わなければならないプレッシャーと闘わなければなりません。それができる投資家のみが長期保有で利益を上げられる時代になると考えます。
そのような訳で、長期的にはトルコリラのスワップ運用はアリだと思います。ただし、人を選ぶということだけは肝に銘じて挑んでください。
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