大きな暴落を迎えた2016年年末のトルコリラ相場。この下落ではとうとう対ドルでUSD/TRY=3.600の領域に到達。ほんの一ヶ月で15%以上も通貨レートが下落しました。史上、稀に見る大暴落でした。
トルコにとって、リラが暴落する材料はいくらでもありました。クーデター、ソブリン格付け低下、米国政策期待のドル高にEU加盟交渉の凍結。ただ、いずれのファンダメンタルズも15%もの下落を説明できる適当な材料であるとは思いません。大暴落の本質を説明するには、別の視点が必要です。
結論からすれば、トルコリラの大暴落は需要の低下によるものと考えます。ソブリン債の格付けが引き下げられたため、手を引いたファンドがたくさんあったのです。
今回は、エリオット波動の理論と絡めて暴落チャートの個人的な解釈を述べていきたいと思います。2016年の振り返りと併せて解説していきます。
2016年の大暴落あらまし
最初にチャートを見ていきましょう。トルコリラの分析で見るべきは対円ではなく、対ドルのチャートです。ドルは世界の基軸通貨ですので。以下はトルコリラ対ドル(USD/TRY)の月足チャートです。
チャートは上にいくほどドル高リラ安となっています。いくつかの主要な出来事をチャートに書き込んでみました。トルコリラはクーデターで大暴落となった後にも値を戻していたのですが、直近の値動きで一気にリラ安となりました。実に15%を越える大暴落です。
それにしても、何がトルコリラの暴落を引き起こす原因となったのでしょうか。中銀の独断による政策金利の利上げでしょうか?再開したばかりのEU加盟交渉が凍結された件でしょうか?それとも横暴が目に余るエルドアン大統領のワンマン政治でしょうか?はたまた、原油減産合意による原油高懸念でしょうか?
いずれのファンダメンタルズも正解と言えば正解と言えます。しかし、それでも1000pipsもの大きな値幅を説明できるほどインパクトのある材料とは思えません。そんな訳で、以下には管理人なりの解釈を示したいと思います。
需要低下で大暴落という解釈
今回の大暴落の原因となったもの。それは需給の低下であると個人的には考えています。通貨レートが大きく変動する要因として、買い方と売り方のバランスが崩れることが挙げられます。買い手がいなくなればレートは大きく下がるばかり。この単純な理屈は誰でも分かると思います。
そんなバランスが崩れやすいタイミングというものもあります。それは市場参加者が減ったときです。通貨レートというのは、本質的に強気派と弱気派がケンカを続けて決まります。ただ、特定の要因でケンカに参加している人数がひどく少なくなっているタイミングというものもあります。そんな時にどちらかの勢力がケンカから逃げ出すと、非常に大きなインパクトとなってバランスを崩してしまいます。ここで大暴騰や大暴落が起こる訳ですね。
チャートを見返してみましょう。ひとつだけ市場参加者を激減させる材料がありました。格付け会社によるトルコの格下げです。クーデター後にS&Pとムーディーズが続けざまに信用格付けを引き下げました。信用格付けが低下すると市場参加者が減る理由は、許容リスクを越えたファンドの資金減少(場合によっては解散)があるためです。
昨今の機関投資家は過剰なリスクテイクを禁止されています。リーマンショックの反省から、投資先のリスクを制限する法規や内規ができたのですね。そこへ来て信用評価の格下げが行われると、トルコに関係する投資資産のリスク評価が高くなってしまいます。リスク評価が高くなった分だけ、トルコに投入できる資金が減ってしまったのだろうと考えます。
エリオット波動で見る暴落の前触れ
もうひとつ、暴落を予兆できる材料があります。エリオット波動です。管理人はこちらの視点からトルコリラの暴落を予想していました。念のため言っておきますが、今回の暴落解説は後出しではありませんよ。始めて本ブログをご覧の方は、以下の過去記事も読んでみてください。
記事に書いた通り、2016年のトルコリラは揉み合いの状況にありました。エリオット波動で言うところの第4波というものです。
エリオット波動の第4波で特徴的な点は、需給の低下により値動きの荒い揉み合いチャートとなることですね。単純にチャートの形だけで見ても結構なのですが、需給低下という現象があることを念頭に入れておくと理解が深まります。そして、その考えが念頭にあれば、戻り相場も一気に進むという展開が頭に浮かぶと思います。
トルコリラの暴落からのリバウンドで狙う方法
最後に今後の予想について。ここまで「暴落」という言葉を連発してきたので、さすがに皆さん腰が引けていると思います。ただ、管理人のスタンスは「買い」です。それは先に示したエリオット波動の解説でもチラリと見せました。
買いと判断する一つの根拠として、目先の「仮需」の存在があります。仮需ってなんだ?というと、簡単に言って「売ったものは買い戻す必要がある」という相場用語です。本来は空売りに対して使う用語ですけれども、トルコリラの場合はプライベートファンドが買い戻しを行うという意味で使いたいと思います。
トルコリラを扱うファンドは、基本的に買いでしか運用しません。ヘッジファンド=空売りというイメージが強いのですけれども、売りも戦略に入れているファンドなんてほとんどありません(参考書籍)。なおかつ、高金利通貨/新興国投資という商品特性を考えれば、買いオンリーがファンドの運用方針でしょう。結果、ファンドとして顧客資金を預かる以上、いつまでも現金として持っておく訳にはいかず、いずれ買いを再開しなければならないという考えに至る訳です。
そんな暴落後のリバウンドを狙う方法も存在します。以下の記事では具体的な方法をご紹介しました。トルコリラの底値を拾うならマストの知識でしょう。是非とも併せてご覧ください。