コラムとブログ PR

トランプ氏勝利後のトルコリラFX相場感

本ブログは記事内に商品プロモーションを含む場合があります

今回はトランプ次期大統領に対する市場の反応と米経済の「いま」から、トルコリラの相場感を練っていきたいと思います。個人的な相場観は、11月の決算売り一巡でリラ買いチャレンジです。ただし、対ドル・対円は不透明なので対ユーロで買いました。

波乱の米大統領選挙を終え、市場の過熱感も落ち着きを取り戻してきました。しかし、この間にトルコリラは先進国市場の煽りを受けて下落。対ドル・対円・対ユーロと主要3ペア全てで最安値を付ける結果となりました。直接的な原因は、トランプショックでのリスク回避円買い、その後のトランプ期待でのドル買い、欧米系ファンドの決算売りが重なったことです。

ただ、11月中旬のいまでは決算売りが一巡したことでしょう。「じゃあ、買ってみようか?」と考える訳ですが、一体どの通貨ペアが良いのでしょう。日米欧の経済見通しから、トルコリラの相場感を練っていこうと思います。

ドル相場のいま

最初に大統領選から1週間経過した今のドル相場を見てみましょう。見るのはドルインデックスのチャートです。ドルインデックスとは、ドル以外の主要外貨に対して相対的・総合的なドルの上下動を示した指数です。この値が上がっていれば、概ねドルは強いと言って良いでしょう。

dollar-index-chart

大統領選が意識されはじめた11月初頭から大幅にドル高水準となりました。トランプショックで一時的にドル安となったものの、直近で急激な回復を見せました。これは同氏の勝利宣言スピーチが「思っていたよりまとも」であったためで、さらにその後に新政権への期待・歓迎ムードが広がったと言われています。米国株式市場も活況を呈しており、混沌とした選挙前から一変してリスクオン相場となりました。

一方で報われないのが新興国市場です。もともとヘッジファンドの決算売りが出る時期であったことに加え、先進国の株式市場に投資資金が流れました。トルコリラは対ドル・対円・対ユーロの全てで下落。特にリラ安を牽引したのが冒頭にも述べたドル高の動きです。下記チャートの通り、またしてもリラはドルに対して最安値を更新する憂き目に遭いました。

大統領選後のドルトルコリラ

ここら辺の予想は事前に告知していたので弊サイト常連の方は難を逃れたことでしょう。ただ、市場が落ち着いた後のドルがすぐに反転下落するかというと、そうとも言い切れません。なぜならば、トランプ新大統領の発言と政策、そしてそれに対する市場の反応までもが全くちぐはぐであるからです。これでは方向感を判断するファンダメンタルズが整いません。

以下には、そんな市場の矛盾をいくつか解説してみたいと思います。

矛盾するトランプ政策と市場のいま

「イェレン議長を更迭する」「中国製品に45%の関税を掛ける」「日本から軍を撤退させる」。選挙中には様々な爆弾発言で物議を醸したトランプ次期大統領。経済政策にもいくらか言及していて、相場が振り回されたこともありました。選挙中には「そんなことできる訳がない」との評価があったことも事実です。そんな批判も勝利後の今となっては「選挙用のアピールであった」とプラス評価に転じ、逆トランプショックとして市場心理を好転させる材料となっています。

ただ、選挙用のアピール要素を差し引いても、トランプ大統領の掲げる方針はいくつもの矛盾をはらんでいるように思います。市場の反応も然り。現在は市場心理こそ好転したものの、米国経済の見通しが立った訳ではありません。当然ながら、ドルとそれに順ずる日本円の先行きは不透明です。

以下には、そんな政策の矛盾、市場の矛盾を述べたいと思います。

財政拡大政策でドル高のジレンマ

トランプ大統領の基本路線は「大きな政府」です。企業や富裕層に対する減税、公共事業の増加、規制緩和など、政治・経済の活動範囲に対して拡大志向の政策を口にしてきました。ヒラリー候補が増税や支出削減といった緊縮財政を打ち出していたので、それに対向する措置であったのかも知れません。しかし選挙後にあっても、オバマケア(医療福祉に対する救済措置)を一部継続する旨を表し、徹底的に縮小路線については否定的な面を見せています。

一方では「アメリカファースト」を掲げ、特に産業に関しては国内回帰・排他措置・保護主義を志向しています。製造業に関して例を挙げれば、工場などのモノづくりを米国内に戻し、安い中国製品は排除して、さらに国内の産業は政策で保護しようという考えを述べています。また、国内製品の価格競争力に絡んで、為替水準に対しては輸出に有利なドル安を志向しています。

実は上記2つの政策志向は矛盾しています。というのも「大きな政府」は財政拡大を伴い、ドル高を促すからです。公共事業を増やせば政府の支出で経済が潤います。当然、米国株価は上がることでしょう。さらに財源確保が必要ですから、国債発行を増量する必要が生じます。米国債の供給が増えれば利回りが上がるでしょうから、ここでも買いが入ります。どう見たってドルの需要は増えるばかりです。

ドルの為替水準に対して、ドル高の経済政策とドル安の保護主義志向に本質的な矛盾が生じているのです。困ったことにトランプ氏は有言実行タイプの実業家です。なのに色んなことを言ってしまいます。最強の矛と盾、どっちを使ってくるのか分かりません。これがドルの方向感が分からない根本的な原因です。

12月利上げを90%織り込む市場の期待

前述の矛盾を解消する手段がひとつあります。FRBによる利上げです。既に「緩やかな利上げ」で米経済の過熱感にブレーキを掛けているFRBですが、彼らが踏むブレーキの強さを大きくすることでドル高をいくらか抑えることが可能になります。

実際問題、選挙後のドル高・株高の状況を鑑みて、市場では年内12月の利上げ確率90%という予想がされました。ほとんど年内の利上げを確信している状況です。「だから早く買っておかなきゃ」と表現すれば良いでしょうか。市場には「ドル高・株高だから年内利上げする」「年内利上げだからドル高・株高」という相互依存の論理が働いていたように思います。

実際、本日の会見でイェレン議長は12月の利上げを明確に示唆したようです。ただ、それでも現在は市場の期待だけが先行している状況です。「バイザルーモア・セルザファクト」になるんじゃないでしょうか。期待先行で相場が上がった場合、事実が明るみに出た時点で売られることが多々あります。

ドルが下がる要素なので、リラ買いには追い風になるかも知れません。しかし問題となるのが、それでも喧嘩を売るにはドルの勢いが強すぎること。セルザファクトの期待は望みが薄いようにも思えます。現段階でドル売りでのトルコリラ買いは、管理人にはためらわれます。

排他貿易で円安株高の逆転現象

話を移して日本円の話へ。ここまでさんざん書いてきましたが、トランプ次期大統領と米経済に対する期待で市場はリスクオンに傾いています。こうした局面では、安全通貨の日本円は売られます。現在は円安の状況にあります。

円安の状況では日経平均株価が上昇します。これはリスクオンの状況に加えて、日経平均指数を構成する企業に輸出メーカーが多いことが原因だと言われています。円安は輸出企業の利益にとってメリットであるからです。株価は将来の利益を織り込んで、上昇したり下落したりを繰り返します。

ただ、ちょっと思い出して下さい。トランプ次期大統領は保護主義志向ですよ。日本製品が締め出される、もしくは逆風を受けるリスクが大です。今の円安・株価上昇はファンダメンタルズと逆方向に動いている逆転現象ですらあるのです。現在は確かに円安・株高になった状況ですが、これから続くのとは別の話です。現在の状況では円安トレンドを考える材料が揃わず、直近の値動きだけを見て円安開始を唱えることは早計です。

これからの円高・円安のヒントを探すのであれば、今月11月の末まで日本株を観察してみるといいかも知れません。先に書いた通り、11月は欧米系ファンドの決算売りが出る時期です。2016年の日本株は年初から外資に見放されてきました。ただ、アメリカの利上げや政権交代に絡んで外資の買いが再び入るのであれば、決算売りの終わるこの時期に兆候が出てくるはずです。ご存知の通り、外資による日本株買いは円安トレンドを伴います。

トランプ相場でユーロを売る

最後にリラ買いの相手通貨は何にすべきかという話。以上のドル・円の不透明感を考えるとリラ買いの相手はユーロ売りが妥当かなと考えます。以前書いた「トルコリラは対ユーロで買え」はまだ有効です。さらにその後、いくつかのユーロ安要因も増えています。

簡単に言って以下のようなユーロ売りの材料が眠っています。

  • トランプ大統領でEUとの関係性が悪化
  • 米国離脱でNATOの結束弱まる懸念(シリア問題継続)
  • フランス国民投票でEU離脱国追加のリスク
  • 来年はイギリス離脱の交渉開始で一悶着
  • ECBが緩和策のテーパリングを示唆
  • EUの問題児ドイツ銀行

経済規模の拡大が期待される米国に対して、EUは問題ばかり目立つ印象。正直、ユーロ対トルコリラ(EUR/TRY)の値動きは読み辛いので苦手なのですが、直近ではこのペアでリラ買いポジションを作りました。長くなるので詳細はまた別途書きます。

デューカスコピー・ジャパンでユロリラショート

上記の画像は管理人のデューカスコピー・ジャパン口座から。余談ですが、セントラル短資FX外為どっとコムのようなTRYJPYしか扱いのないFX会社でもユロリラショートは作ることができますよ。トルコリラ円の買いポジションに対して、同額のユーロ円売りをぶつけることでトルコリラの対ユーロ買いにしています。「30,000通貨のリラ円買い(約100万円)」に「9,000通貨のユーロ円売り(同じく約100万円)」で「9,000通貨のトルコリラユーロ買い」が1セットという訳です。

詳細は以下の記事をご参考に。

トルコリラをクロス通貨でリスクヘッジ

※本記事は筆者個人の相場感を綴ったものであり、読者の方に売買を強制するものではありません。FXは自己責任です。FXのトレードは、ご自身の判断で行なってください。

同じカテゴリーの関連記事
エルドアン大統領が政策金利の方針転換 コラムとブログ

3度目の最安値でエルドアン政権が方針転換

2017年12月9日
トルコリラの為替投資戦略
2017年11月にトルコリラは直近3度目となる最安値の更新を行いました。下落の発端はヘッジファンドによる決済売りのようです。ただ、決算期間が終わってもなお、買われる理由のな …
トルコリラ円は年末相場入り コラムとブログ

トルコリラ急落で年末相場入り【調整局面】

2018年12月5日
トルコリラの為替投資戦略
今回は直近のトルコリラのポイントとなる為替レートを解説していきたいと思います。 12月5日、突然に急落したトルコリラ。根本的な要因は海外勢がクリスマス休暇に入ったこと …