昨日、11月5日にアメリカで議会の中間選挙が行われました。結果は、上院・下院ともに、与党が議席の過半数を占め勝利。これまでの政策が評価され、アメリカの政治的安定性がさらに強化された形となりました。
政局の詳細はともかくとして、政治的安定性は経済に強く影響します。これまで続いてきた米国の株高、通貨高がさらに加速することになるでしょう。過去の結果を鑑みると、与党勝利で景気がさらに上向きになる傾向が分かります。
相対的に、新興国マイナー通貨は再び通貨安の憂き目に会いそうです。今回は、米雇用統計を前にして、現況の確認とマイナー通貨トルコリラの行方を占ってみたいと思います。
FOMC後の株高とドル高
先月の終盤、FOMC(米経済政策会議)議事録では、以下の事項が発表されました。
- 米量的金融緩和(QE3)の終了
- 金融緩和終了後も利上げは延期
- 雇用状況を鑑みて利上げの時期を考える
要は、長らく続いてきた量的金融緩和の終了を明言するとともに、それに伴う混乱回避のためにソフトランディングを目指す形です。金融引き締め策である利上げの時期も、雇用状況に応じて先延ばしする方針です。これが市場に楽観的観測をを与えました。
FOMC議事録の公開を受けて、アメリカ市場は株高。それに伴い、基準通貨ドルも買われる格好になりました。米国株を買うために、世界から通貨が集まっているのです。直近の値動きは、株高=ドル高と見て差し支えないでしょう。
以上の値動きは、11月7日(金)の米雇用統計でサプライズでもない限り、年末にかけてしばらく継続するでしょう。ヘッジファンドが決済を終えて、ここからが今年のかき入れ時の時期に入るためです。日本と欧州の量的金融緩和が加速している点もポイントです。日本円、ユーロと量的金融緩和で通貨安となれば、相対的に米ドルが上昇します。
通貨安に悩む新興国
一方で、米ドルの上昇で悩む国も存在します。通貨安が進む新興国です。おおよそ新興国というのは、どの国もインフレ率の増加に頭を抱えています。特に、トルコのようなエネルギー輸入量の多い国は、通貨安となることで原料コストが増加します。この点、原油価格が最近では下がって来ている点が、不幸中の幸いでしょう。
ただ、エネルギーの問題ばかりではありません。ドル建て社債の利子や設備投資の負担も増加します。加えて、通貨防衛のために利上げとなれば、国内の投資を抑制してしまいます。新興国各国の中銀としては、非常に悩ましい所でしょう。
通貨高に悩む日本や欧州、豪国の先進国には都合が良いかもしれません。いずれの中銀も兼ねてから、為替レートの高騰に懸念を示しています。特に欧州は量的金融緩和を始めた点、本気度が伺えます。
参考記事:日米欧の金融緩和策とマイナー通貨の見通し
世界的に、貯蓄から投資へ、守りから攻めへの転換が進んでいるように思います。この点、新興国投資も攻めの一手ではあるのですが、まだそこまでリスク許容度が追いついていません。現在は堅実な投資に遷移している過渡期であると言えるでしょう。新興国マイナー通貨が高騰するのは、もう少しだけ先。特に米金利の利上げが始まったあとの話になると予想しています。
参考記事:金利上昇で新興国投資をするファンドの事情
中間選挙で株高継続
話をアメリカの政局と経済に戻しましょう。過去の傾向を見ると、アメリカの中間選挙で与党が勝利した場合、株高が続く傾向があります。直近の例では、2006年のブッシュ政権での民主党勝利が例にあります。その後に、リーマンショックを迎えるまで不動産バブルが続いたことは、記憶に残る歴史です。
年次 | 中間選挙の結果 | 米国景気の変動 |
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1994 | 下院で野党勝利。 ねじれ議会発生。 |
|
1998 | 議席変動ほとんどなし | |
1999 | ITバブル到来 | |
2000 | ITバブル終了 | |
2002 | 上院・下院とも与党勝利 | |
2003 | 不動産バブル到来 | |
2004 | 原油・石油バブル到来 | |
2006 | 上院・下院とも与党勝利 | 不動産バブル継続 |
原油・石油バブル継続 | ||
2007 | サブプライム問題発生 | |
2008 | リーマンショック勃発・不動産バブル終焉 | |
原油・石油バブル終焉 | ||
2010 | 野党の勝利 | |
2014 | 上院・下院共に与党勝利 | |
2015 | ??? |
中間選挙の与党勝利で株高・好景気となるのは、それまでの与党の政策が良好で経済に寄与、プラスの評価をされたからであり、同時に与党議員多数でより政策が加速したためでしょう。とかく、政治的盤石性があることは、その国の経済にプラスの結果をもたらします。今回のオバマ政権でも、過去と同様に、経済をさらに活性化させるのではないかと考えます。
経済政策の要となるのは、シェールガス革命でしょうか。中東依存のエネルギー事情に風穴を空けたことは、エネルギー単価の下落だけでなく、外交上のメリットも生じます。近年、オバマ政権が中東に強気なのも、この背景があるからではないでしょうか。将来、どのような要因が定説とされるのか、非常に興味があります。
対ドルではリラ売り加速か
最後に、我らがトルコリラの通貨事情を見通してみましょう。やはりというか、まだしばらくはスワップポイントで片手うちわの投資を行うには厳しいというのが、管理人の意見です。
ひとつは、ヘッジファンドによるリラ売り加速です。トルコリラは、昨年2013年の年末に掛けて資本流出による通貨安が進行し、年明けに最安値をつけています。今年も、この傾向が顕著に見られることと予想します。
年末の話をするのも早いかも知れませんが、クリスマス休暇となってもあまり多勢に影響はしないでしょう。一昨年から、年末であっても為替がよく動きます。近年、バケーション好きの外国人も、休みをずらしたりと、長期休暇の時期でもよく働くようになりました。ドル高と新興国マイナー通貨安はまだまだ続くことでしょう。
長期投資を考えるなら、もう一度、押し目を待って良いように思います。あえてリラ買いで臨むのなら、対ユーロか対円でしょうか。量的金融緩和により、メジャー通貨側の通貨安が期待できそうです。日銀の介入を期待して、トルコリラ円でトラリピしても良いかもしれません。
各通貨ペアに適したFX口座とその理由は、以下の各記事を参考にしてください。
- 対ユーロで買うなら→AVA Trade Japan
- 対円で買うなら→マネースクエアジャパン
- トルコリラドルを売るなら→ヒロセ通商