今回はトルコ選挙後のファンダメンタルズ分析を行いたいと思います。
トルコでは6月に国民投票を終え、エルドアン大統領の再任および権限強化が図られました。市場が最も嫌っていたシナリオが実現した形です。しかし、不思議とトルコリラの為替レートは下がらず、横ばいを堅持しています。
こうした状況に管理人は「材料出尽くし」と判断しました。フィッチの格下げや新内閣の失望感すら既に織り込んでいる状況です。具体的に解説していきたいと思います。
選挙終了も新内閣に失望感
最初にトルコ新内閣の大問題から解説しましょう。残念なことにエルドアン大統領率いるトルコの新内閣は市場の期待を裏切ったようです。主な問題は2点。一つは財務相にエルドアン大統領の娘婿が就任したこと。もう一つは、シムシェキ前副首相が組閣から外されたことです。
まずはアルバイラク新財務相ですが、彼はエルドアン大統領の娘婿です。身内人事でそれだけでも批判ものなのですが、さらに輪を掛けて問題発言を起こしました。中銀批判です。中銀による従来の金融政策は受け入れがたいと批判し、今後も批判圧力を高める姿勢を見せました。
もう一点が、メフムド・シムシェキ前副首相が内閣から外された件です。この人物は「市場の守り人」と呼ばれ、トルコのインフレ問題に果敢に立ち向かっていた閣僚でした。先だってトルコリラが最安値を更新した際も、チェティンカヤ中銀総裁と共に市場参加者を説得に行くなど、精力的に通貨防衛を図っていた人物でした。しかし、以前から担当範囲を縮小されていて、ついには今回の人事で外されてしまったのです。
この2大人事は、市場参加者を失望させるに十分な内容でした。この人事がニュースに流れると、トルコリラは3%下落しました。残念ながら、選挙前に期待された新人事によるリラ高のシナリオは空振りに終わってしまいました。
フィッチ格下げも既にリスク織り込み済み
もう一つネガティブなニュースもありました。フィッチによるトルコ格付けの引下げです。つい先日の7月13日、格付け会社のフィッチはトルコの格付けをBB+からBBに引き下げました。
理由は中銀の独立性が担保されていないこと。そして、今後の見通しも不透明であることです。一方で、公的債務の少なさは評価していたようです。ただ、BBに引下げられたことで、トルコの格付けはジャンク級に落ちました。
もっとも、こちらのネガティブ材料はすぐに市場に織り込まれました。トルコリラは大きく下落するも、即座にリバウンド。チャートに大きな下髭を残して引けるという結果となりました。
ファンダメンタルズの悪化もチャート下がらず
興味深い点は、こうしたマイナスの材料が重なったにも関わらず、トルコリラのチャートが下がらないことです。このことは、選挙後にエルドアン大統領が勝利した際にも見られました。市場はエルドアン大統領による強権政治を嫌っています。順当に行けば、国民選挙で再任されたことを嫌忌して大きく下落しても不思議ではなかったのです。しかしながら、そんなネガティブなシナリオは空振りに終わり、トルコリラは最安値更新を止めました。
ネガティブな材料なのにチャートがさがらない。この状況を管理人は「ファンダメンタルズのダイバージェンス(逆行現象)」と呼んでいます。得てして、材料出尽くしの局面によく見られる現象です。
上記はトルコリラ円の日足チャートです。トルコリラは悪材料にも関わらずレンジ相場を堅持。むしろ、それまでの最安値更新を止める格好になりました。ここから、何かのはずみでリラ高となれば、そこがトルコリラのリバウンド相場が始まる起点になるものと考えます。
秋口の大口参入に期待高まる
では、トルコリラが上がる材料は何でしょうか。ヒントはトルコリラの割安感にあると考えます。
実は昨年の中旬から、トルコリラの割安感に関する市場ニュースがちらほらと出始めています。面白いところでは、ゴールドマンサックスやソシエテ・ジェネラルがトルコリラに強気というネタがあったところでしょうか。彼らは市場をけん引する大口投資家なので、一定の影響力を与えそうです。
既に、日本株やアメリカ株は高値の状況が続いています。そろそろ、市場のリスクマネーが新興国に回帰してもよさそうなものです。あいにく、どこまでもトルコリラが上がるというシナリオは想像できませんが、一定のリバウンド相場が来ても良い状況となりました。
さすがにこの夏は大口投資家も夏休みを取っています。参入があるとすれば秋から冬のリスクオン相場でしょう。この夏は安値を拾い、来る秋に備える準備にしたいと考えます。