トルコリラといえばスワップポイントの高さが魅力です。多くの投資機関や個人が高い利率に魅力を感じ、トルコリラの購入を検討します。短期的には売りが優勢であるものの、やはりチャンスがあれば長期保有でスワップポイントを稼ぎたいものです。
さて、そのスワップポイントを生み出している源泉はトルコの高い政策金利です。今回のブログでは、トルコ政策金利の推移を見ていきながら、政策金利と為替レートの相関を考察していきたいと思います。データとして、政策金利と為替レートの履歴を重ねたチャートを利用します。
内容は以下の通りです。
トルコ政策金利の推移10年
早速ですが、上図はトルコ政策金利の推移を示したグラフです。2005年1月以降のデータを利用しています。データはネット上で探しました。BloomBerg等のサイトを調べれば、政策金利のデータソースは簡単に見つけることができます。
このグラフだけ見せても芸がないので、少々解説を入れていきたいと思います。
筆者は2008年リーマンショックの前後で、トルコリラ経済の構造が変わったと考えています。ここでも、その考え方に従い、直近の10年を2つの時期に分けました。
リーマンショックの前は、金融引き締めの時代です。この背景には、2005年にトルコがデノミを実施した事実があります。インフレ抑制のために、金利を上げ通貨の供給減らす必要があったのです。負担を減らすために、2回の金利引下げをトライしていますが、インフレ圧力に負けて再度金利を引き上げています。詳細は後述します。
リーマンショックの後は、金融引き締め解除・成長重視の時代です。政策金利の利上げは、国内企業・市民の負担を伴います。企業・個人への貸し出し金利も高くなるからです。そこで、国内の成長を促すためには、金融引き締めを解除する必要がありました。実際、トルコ中央銀行は利下げ政策を取る事で、リーマンショック後のマイナス成長から、GDP成長率9.16%(2010年)にまで回復することに成功しています。
トルコ政策金利の推移については、大まかに上記の通りです。では、肝心の為替レートはどのように推移したのでしょうか?
次章では、為替レートと政策金利の相関を解説していきたいと思います。
政策金利と為替レートの相関
上図は、政策金利のグラフに為替レートの推移を重ねたものです。為替レートは分かりやすいように、トルコリラ対ドル(TRY/USD)のデータを利用しています。基準通貨(ドル)をベースに為替レートを比較すると分かりやすいのです。以下には、為替レートを考慮して、政策金利の相関を探って行きたいと思います。
金利引き上げと通貨防衛
デノミから2008年までは、トルコリラはインフレ対策・金融引き締めの時代です。
基本的に政策金利が上がると、為替レートも上がります。経済学で言うところの「需要と供給の関係」が成り立つからです。上記グラフにある通り、トルコは2007年と2008年に金利の引き上げを行ないました。大幅なリラ安を受けての金利引き上げです。
金利の引き上げが行なわれると、市場への貸し出し金利も引き上げられます。結果、市場への通貨供給量が減ります。市場の企業や個人が貸し出しを受け辛くなるからです。
供給量が減らば、通貨のプレミアは上がり、価値は上昇します。さらにリラ高となれば、外国の投資機関はここぞとばかりに買ってきます。結果、更なるリラ高が期待され、通貨の価値が維持されます。
この利上げによる経済政策は、いまや新興国による通貨防衛の基本になっています。政策金利と為替レートが比例の関係にあるケースでした。
金利引下げと国内の成長
リーマンショックの後は、国内経済を成長させるための金融引き締め解除の時代です。トルコは大幅な政策金利の引き下げを行いました。
政策金利の利上げは通貨高を促す一方、国内経済の成長を停滞させます。なぜなら、企業が新規の投資をする際には、銀行から融資を借り受ける必要があるからです。高金利の状況では融資の利子も高くなり、企業としても投資に二の足を踏む状況が出来上がります。
そこで必要となるのが、金利引下げです。トルコの場合、金利を引き下げて企業の活動を促し、産業の強化と外資呼び込みに力を入れる政策を取りました。結果、フォードなど名だたる世界企業がトルコに進出を果たしました。
トルコの自動車の生産量も飛躍的増加しました。リーマンショックの後は、国内の経済成長が焦点であったのです。
前述の産業強化の過程では、海外の企業からトルコに資本が集まりました。副産物として、トルコリラが再び上昇する状況が生まれました。2010年~2011年頃の出来事です。このケースでは、金利引き下げによってトルコリラが上昇するという現象が生じました。
2014年の緊急利上げと今後の行方
以上のように、①金利の引き上げにより通貨高が実現する場合、②金利の引き下げにより通貨高になる場合の2つのケースをご紹介しました。
結論として、本記事の主旨である「政策金利と為替レートの相関」に関しては、ケースバイケースであるとしか言えません。ただ、この結論を踏まえた上で、最後に2014年1月28日に行なわれた緊急利上げについて言及したいと思います。
直近の新興国懸念の経緯を見れば、トルコの緊急利上げは通貨防衛策です。前述の2006年・2007年と同様に①金利の引き上げにより通貨高が実現するケースです。そのため、緊急利上げから予想される結果は、将来のリラ高です。
筆者は、長期的に見れば、トルコの為替レートは現在の低迷した状況から元の水準に戻っていくものと考えます。
ただ誤解して頂きたくない点は、短期的に見るとそうでもないという点です。2014年2月現在、トルコリラは未だに下落基調にあり、投機筋の売り攻勢に遭っています。おそらくその理由は、3月に地方選挙を控えているからでしょう。トルコの政治的混乱が続くようなら、再度下値をトライする状況が生まれます。
1/28の緊急利上げは、市場の予想を大きく裏切るものでした。まだ、しばし混乱が続くかもしれません。その混乱が収まった頃がトルコリラを買うチャンスではないでしょうか。
上記の状況を戦略に落とし込むと「短期の売りや異業者両建てで情報と利益を得ながら、長期保有で差益とスワップ利益を得るチャンスを伺う」という方針がベターでしょうか。筆者は、この戦略を進めながら、長期の建て玉を仕込むチャンスを伺っています。
※このコラムは、為替取引の情報提供を目的としたもので、取引を強要するものではありません。内容は、あくまで筆者個人の意見であることをご理解ください。