2017年11月にトルコリラは直近3度目となる最安値の更新を行いました。下落の発端はヘッジファンドによる決済売りのようです。ただ、決算期間が終わってもなお、買われる理由のないままに売られ続ける展開が続きました。
そんな中、最安値の更新を止めたのがエルドアン大統領の側近による発言でした。利上げを許容する内容を示唆することで、市場の売りに歯止めが掛かりました。今回は、直近の経緯を解説したいと思います。
トルコリラが安値を更新した経緯
2017年11月にトルコリラが対ドルで3度目の最安値更新に至りました。為替レートはあわや1ドル=4.0000リラに届くかという下落っぷり。政府の対応が発表されるまで売られ続け、だらだらと前回の安値に到達する状況となりました。
慌てたのがトルコ中銀です。従来から行っていた流動性オペを強化するとの対応を打ち出すも市場は反応せず。前回の安値更新を止めた政策が流動性オペであっただけに決定打に欠ける状況となりました。
そんな中、安値更新を止めたのがエルドアン大統領の経済アドバイザーによる利上げを示唆する発言でした。
3度目の安値でエルドアン大統領に心変わり
FinancialTimes紙に11月23日付けで以下の内容の記事が掲載されました。原文は英文ですが、管理人の拙い英語力で内容を和訳しました。要約すると、エルドアン大統領の経済アドバイザーの発言でリラがリバウンドしたという主旨です。
エルドアン大統領アドバイザーによりリラ高。その後、更なる高値へ。
トルコ大統領は自身の方針を変えるのか?
エルドアン大統領の経済アドバイザーであるセミル・エルテム氏がトルコ中銀はいつでも利上げを行う可能性があると指摘した後、トルコリラは1%以上のリバウンドを実現した。
中略
エルテム氏はロイター紙に対して「インフレ予想のなかで劣悪な状況が続く場合は、中銀はいついかなる時でも利上げを行う可能性がある。それこそ、(次回の政策会議である)12月14日の会合を待たずにでもだ。」と答えた。
以下略
ポイントはエルドアン大統領の側近が答えているという点ですね。一般的には、政府が中央銀行の政策に言及することは稀なケースです。ただ、トルコの場合、従来から政府が中銀に利下げ圧力を掛けてきたという背景があります。利下げで介入してきたついでに、利上げも介入したいという意思があるのでしょう。
とは言え、マーケットは「エルドアン大統領が利上げを許容する姿勢を示した」というメッセージと受け取りましたし、それが当然の反応でしょう。従前から利上げしたかったトルコ中銀としては、格好のお膳立てが整った状況です。
利上げ期待で市場は中銀発表に注目
上記の理由で、トルコリラは最安値更新の状況から一転。むしろ足場を固めて上昇転換を示唆する状況に変わりました。
差し当たり注目されるのは、12月14日のトルコ中銀による政策金利の発表です。この日に向かって市場の期待が掛かり、トルコリラも上がる期待が持てます。市場は徐々にトルコ利上げの期待を織り込んでいくことでしょう。
もっとも、12月の年末は物事のスタートに適した時期ではありません。慣例的には1月の政策会合で利上げが決定される傾向にあります。次回14日の発表は空振りに終わる可能性も残ります。その場合は、一時的に下落することでしょう。ただ、次々回に向けて引き続き利上げ期待は続きますので、再度買いのチャンスが来るはずです。