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米量的金融緩和とトルコリラ安の関係

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本日は2014年1月25日です。今週の終わりにトルコリラの下落が進み、対ドルで最安値更新する事態がありました。下落の要因は、新興国全般の通貨危機懸念です。

今回は、その背景となった米量的緩和縮小との関係性を解説します。
大まかな内容は、以下の通りです。

米量的緩和と新興国投資の関係

昨年2013年の末まで、アメリカは大幅な量的金融緩和を続けてきました。
俗に言われるQE3です。
量的金融緩和とは、簡単に言えばアメリカの金庫から市場にお金を流して、経済を活性化させようという試みです。

市場に資金が供給され続けると、市場にはお金が溢れかえります。
自由経済では、お金が余れば、その分を投資に回す事態が生じることがセオリーです。
今回の量的金融緩和でも運用利回りを求めて、様々な分野に投資が行われました。

その投資先の一つが、アフリカやトルコなどの新興国です。
FXでトルコリラが魅力的な3つの理由でもご紹介したとおり、新興国の成長力は投資先として大変魅力のあるものでした。
日本でも2010年頃から、トルコリラ債投資信託やリラ建てMMFが盛んにPRされてきました。

ところが、2013年末、FRBのバーナンキ議長(当時)は金融緩和の縮小を決定します。これにより、これまでの資金の流れに変化が生まれました。

米量的金融緩和の縮小と新興国からの資金流出

米量的金融緩和は、2013年1月の現在でも続けられています。
問題となるのは、今後の見通しとして、市場に供給される資金の絶対量が減ることです。将来、資金の供給が減る見通しが生じたことで、ヘッジファンドは投資先を絞り込む必要が生じました。

ヘッジファンドの投資先としては、大まかに分けて以下のものがあります。

国内投資

国内と言っても、アメリカ国内への投資を指します。
対象となるのは、ダウやNASDAQといった市場に上場している株式や、米国債です。

株式も債券も、リスク資産ではありますが、他の2つに比べると比較的低リスクの部類に入ります。

海外先進国投資

日本を含む先進諸外国への投資を指します。
対象となるのは、日本やドイツの株式や債権、為替売買です。

アベノミクスの初頭によく聞かれた(日本人から見ての)外資ファンドが、この分類に含まれます。

新興国投資

トルコを始め、アフリカやブラジル、インド等への新興国の投資がこれに当たります。

ハイリターンである一方、3つの中では一番ハイリスクな投資先となります。

さて、ヘッジファンドはこれまで潤沢に溢れた資金の投資先として、リスクに目をつぶって新興国への投資を行ってきました。
ところが、量的金融緩和が縮小されるとの見通しを受けて、投資先を厳選する必要が生じた訳です。

この結果、言わば「切られた」のが新興国への投資です。
投資先を限定するためのリスクオフの方針により、新興国は優先度が低い投資先となりました。
さらに、アメリカや日本といった先進国の株式市場が活性化した状況も拍車をかけました。

結果、トルコやブラジルといった新興国は、資本流出に転じる事態となった訳です。

資本流出とリラ安の関係

トルコからの資金流出の背景が分かれば、後は簡単な経済のセオリーでリラ安の原因が理解できます。

まず基本的に、トルコに投資する場合、外貨でトルコリラを買う必要があります。
結果、トルコへの投資が加速するほどリラの需要が高まります。
ここで、経済の需要と供給の関係で、需要の高いトルコリラは価格が上がり、リラ高となります。
実際、トルコへの投資が盛んであった2008年には、トルコリラは対ドルで最高値を記録しています。

しかし、トルコから資本が流出している現在、これとは逆のことが起きています。
それまでトルコリラとして維持されてきた資金が、再び外貨に戻されている訳です。
つまりはリラ売りで、トルコリラの価格下落が続いています。

特に、トルコは企業への投資を外資に依存しています。
このため、資本流出による通貨安が顕著に現れます。
さらに、企業への投資が減れば成長が減速する懸念が生じ、一層、資本流出に拍車がかかります。

このような訳で、「資本の流出=トルコリラ安」となる構図が出来上がっている訳です。

まとめと見通し

以上の通り、米量的金融緩和の縮小を発端として、リラ安となるメカニズムを解説しました。
ただ、あたかもこれからもリラ安が続くかのように書いてしまいましたが、そう断言するには少し早すぎます。

実は、少し前に同じようなことがあった国があります。オーストラリアです。

オーストラリアは資源が豊富な国で、外資を呼び込んで資源産業を振興し、成長を続けてきました。
結果、オーストラリアドルは高騰し、2010年にピークを記録。現在でも高値を維持しています。

ただ、過去にはオーストラリアドルも下落を続けた局面がありました。
2008年のリーマンショックの頃です。
当時の絶望的な状況からは、現在のオーストラリア高の状況は想像もつかないでしょう

トルコもオーストラリアも同じだとは言いませんが、為替には周期があるのが原則です。
つまり、安値が続く時期があれば、高値に転じる時期もあるのです。
現在のリラ安をピンチと捉えるか、安値買いのチャンスと捉えるか?
それを決めるのが投資家のセンスです。

筆者は、チャンスが到来する瞬間を期待しています。

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