今回はトルコリラの需要について解説をしようと思います。題して「トルコリラが買われている理由」。キャリートレードによる需要と投資家のリスク許容度合いが高まった背景を述べていきます。
2017年に入って、トルコリラの対円為替レートは底を打った感があります。下落を続けていた理由には様々な事情があります。ただ、どうやらリーマンショック後に後退していた新興国投資の需要が再び戻ってきたようです。トルコ以外にも、南アフリカやロシアといったエマージェンシー市場に活況が戻ってきています。
今回は、新興国通貨が買われる理由の一端であるキャリートレードの仕組みを交えながら、直近の市場動向を語っていきたいと思います。
トルコリラが買われている理由
最初に肝心要の需給要因について解説します。相場全般に言えることですが、チャートを動かす要素は3つあると考えています。一つはファンダメンタルズ要因、もう一つはテクニカル要因、そして最後が需給要因です。単純な話、買い方が強ければチャートは動く訳で、時として経済動向を無視した動きすら見せることがあります。
トルコリラは現在、この需給要因で動いているようです。何の需要かと言えば、キャリートレードです。利子の安い通貨を売り、利回りの高い商品を買う。このトレードをレバレッジを掛けて行うのがキャリートレードです。当然、トルコリラや新興国通貨のような金利の高い商品は買いの対象となる訳です。
実は、こうしたキャリートレードの需要については、英FinancialTimes紙に記事が掲載されていました。今年の4月頃の話でしょうか。同紙は完全な英語表記で表現・単語も難解なのですが、管理人は英語の勉強だと思って読んでいます。有料ですが、ネット版は日本の新聞紙ほど高くはありません。興味(と折れない心)のある方は購読してはいかがでしょうか。
キャリートレード需要の確認
前述のキャリートレードの需要が再び高まったことは知っていました。ただ、本ブログで紹介を控えていた理由はいくつかあります。その一つは、円のレートが上昇傾向を示していたことです。要はキャリートレードで売られる側に回るはずの日本円が、まだまだ買い基調であったのですね。
先ほど解説した通り、キャリートレードでは借入利子の安い通貨をセットで売る必要が生じます。そのため、買いの対象として新興国通貨が買われるのはもちろん、金利の低い通貨も売られることが必要条件になります。金利の安い通貨と言えば、言わずもがな。日本円とユーロです。特に日本円はリスク感度が非常に高く、危機が迫れば安全志向で買われ、リスク許容度が高まれば売られやすい通貨です。
当然ながら、トルコリラのキャリートレードについても円売りの法則が当てはまります。2017年の現在、ここに来てやっと、トルコリラ円の下落に底打ち感が現れました。上記はリラ円の週足チャートです。ダブルボトムのチャートパターンのほか、値頃感を示す指標のRSIが久々の50超えを実現し、どうやら反転するらしい気配を見せました。リラ円の下落トレンド反転を以ってして、ようやく管理人はキャリートレードの需要に確信を抱いたという訳です。
歴史あるFT紙であるとは言え、インタビューに応じているのは現役のトレーダー達です。ポジショントークである可能性を疑わざるを得ませんでした。実際問題、インタビューに応じたゴールドマンサックスのマネージャーが「この需要はもう3ヵ月続く」とか威勢良く言いきっていたのですが、その翌週に南アフリカランドが政治不安で急落したなんて事情もあります。
仏国民選挙通過で円売りユーロ買い
さて、新興国投資の需要が確認できた所で、その需要を喚起した要因は何でしょうか。トルコに関しては、国民投票を大過なく通過したことが要因の一端にあります。管理人はここにばかり注目していましたが、どうやら他にも忌避されていたリスクがあったようです。そうです、フランスの国民選挙です。
上記は値動きが最も端的に表れているドルリラ(USD/TRY)の週足チャートです。年初から長らく調整局面を続けてきたのですが、フランスの国民投票通過を機に、揉み合い局面をブレークしました。こちらもこちらで、トルコリラは買いの兆候を示唆しています。
トルコリラを始めとした新興国通貨やリスク資産が買われている理由。それは政治リスクの解消に伴う、リスク許容度合の増加でしょう。機関投資家を始めとして、本来的に投資はポジションを取らねば利益を出すことができません。ただ、脳裏によぎるのは昨年のイギリス国民投票とトランプ相場。どうやら、管理人が考えていた以上に機関投資家はリスク回避性向を強めていたようです。正直、そこまでは読み切れませんでした。
もっとも、出遅れたとは言え上値余地があれば相場に入るのがトレーダーの性(さが)というものです。管理人、臆面もなく対円、対ドルともにリラ買いを行いましたとさ。
新興国経済はこれからが本番
最後に今後の動向を考えてみましょう。新興国投資の本来の需要が戻ってきたのであれば、ここからは買い一辺倒の相場です。リーマンショックの後、先進国こそ金融緩和で経済水準を回復しましたが、新興国経済は未だに出遅れている現状があります。その分、大きなハザードが起きぬ限りは、経済の成長余力があるのも新興国です。
上記は世界銀行のデータベースを元に作成したGDP成長率の比較グラフです。ご覧の通り、日米欧を始めとする先進国は金融オペの実施でリーマンショックの傷から回復することができました。その傷を癒せてこなかったのがエマージェンシー市場です。以前として、成長率こそ高いものの、まだリーマンショック前の水準には達していない現状が見て取れます。
ここに投資妙味がある訳です。
先進国市場は金融オペの出口戦略で頭打ちの現在、投機マネーが向かう先は新興国市場ではないでしょうか。今から新興国投資を考える場合、問題となるのがエントリーのタイミングです。次回はこの辺の事情を解説していきたいと思います。
※本記事には、筆者個人の主観的解釈が多分に盛り込まれています。また、データの正確性を担保するものでもありません。投資・投機には自己責任が伴います。本記事に関しても、読者の方に売買の強要を行うものではありません。