米金融緩和が終了し、エマージェンシー各国への投資資金波及が望まれる2015年。今年の夏は、もしかしたら例年の夏とは趣の異なる相場が展開されるかもしれません。サマーラリーへの期待です。
サマーラリーとは、夏休み(サマーバケーション)を前にしたウォール街を中心とする米国の投資家が保有建て玉を積み増す傾向を指します。2009年頃から観測されている需給要因でした。ただ、その後のサブプライムショックにより鳴りを潜めていたのが昨今の傾向です。そのサマーラリーが米国の好景気を機に復活するのではとの期待が高まっています。
今回は、直近のイベント・事件を踏まえながら、サマーラリーの行方を追っていきたいと思います。
サマーラリーとは
サマーラリーとは夏休みを控えた米国の投資家が自身のポジションを積み増す動きです。この値動きは7月から9月の間まで続きます。本格化したのは2000年頃で、米国はITバブル・不動産バブルに浮かれていました。当時の米国はともかく好景気で、働けば働くほどサラリーが上がる就労環境であったようです。スマートに働くイメージのある米国人でも、夏休みをそこそこに切り上げ働く。そんなスタイルへの変化が始まった時期であったとが伺われます。
ウォール街の機関投資家も同じくして、夏休み返上で相場に望んでいたそうです。当時は想像も付かないボーナスをもらうポートフォリオマネージャーの話題が度々上がりましたね。休暇が長いとの印象のある海外投資家ですが、この頃から夏でも働く米国人にビジネススタイルは変わってきたようです。このサマーラリーに伴う相場環境は、リーマンショックの起きる2008年頃まで続きました。
サマーラリーとは、そもそもは米国の株式相場を対象に使われている単語です。ただ、過去の値動きを分析すると、一応は為替でも同様の傾向があったことを考察することができます。次章に具体的な分析を加えてみましょう。
サマーラリーと為替の傾向
為替におけるサマーラリーの傾向として、はじめに一つの仮説を立ててみます。それは「7月はそれまでの月の値動き追うチャートの形となる」のではないかとのシナリオです。サマーラリーによる値動きはポジションの積み増しですから、夏休みに入る7月からの相場は5月・6月の傾向を踏襲していたであろうとの目論見を建てて分析を行います。では、仮説を検証するために、1994年からの6月・7月・8月の値動き確認してみましょう。
結果は上図の通りになりました。各月の終値が前月の終値に対して何%上昇したかを示しています。分かりにくいのですが、6月・7月・8月の棒グラフが上下で同じ向きに向いていれば、ポジションの積み増しがなされた事実を示します。
分かりやすい所から行くと、1995年から2001年でしょうか。見事、3つ続いた同方向の足が揃っていて、夏の相場でありながら3ヶ月続いてドル買いポジションが積み増されたことが分かります。
2003年から2009年までは、逆に夏のリラ買い傾向が見て取れます。この頃は、トルコリラ含む金利通貨は絶好調でしたから、おおよその傾向には納得がいきます。この機関はいずれの場合も7月・8月とトルコリラが買い込まれていて、サマーラリーの対象となっていたことが伺われます。この傾向は、米QE2が終わる2011年まで続きました。
総じて言えることは、往々にして7月・8月の夏相場はそれまでの傾向を汲む形となってきたことです。加えて、冒頭の仮説の立て方もまずまずで、どうやら調子次第では夏の相場でもトルコリラは買い増しの対象と成りうる可能性があることが分かりました。
直近のイベント
サマーラリーを前に、トルコリラの直近イベントとしては、明日23日水曜日に政策金利の発表が控えています。もっとも、今回の会合ではノーリアクションが市場のコンセンサスとなっています。それを織り込むかのように、トルコリラ対ドルのレートは堅調を維持してきました。
個人的には、ここからは前述したサマーラリーによるトルコリラ買いのシナリオが面白いんじゃないかと考えています。サマーラリーでリラ買い復活。このシナリオが実現すれば、長らく続いたトルコリラ下落のトレンドを一転させる象徴的なシナリオとなるんじゃないでしょうか。まあ、妄想なんですけど。
ところが相場の神様はそんな安易な期待を裏切ります。問題勃発。昨日起きた爆破テロの一件です。トルコ南部でテロと思しき爆破事件が発生。トルコリラが軒並み急落するという事態が発生しました。
これを受けて、相場はリスクオフ一色の様相を呈しました。管理人のトルコリラ買いのポジションは、短期ポジションは軒並みストップオーダーで消失。書き上げたばかりのブログ記事の書き直しも余儀なくされ、タマンナイ感がたまりません。
もっとも、事件を受けて一日過ぎた現在。思考を巡らせた結果、想定したシナリオの修正に至りました。基本的に、サマーラリーによるリラ高が継続すれば面白いとの路線に変更はありません。爆破テロ事件が影響するのは、シナリオ実現の可能性でしょう。この点、シナリオが実現しなければ無理せず見逃しという選択肢が無難です。この詳細について最後に言及していきたいと思います。
シナリオ実現のトリガー
今回は、直近の年にはなかったサマーラリーという需給面の値動きを想定しています。これは、相当、不確定要素の高いシナリオです。加えて、爆破テロという事件による問題の複雑化。ここら辺をシンプルにする買いサインが欲しいところです。
そこで、状況を単純化するための「○○となればリラ高継続」というタイプのモノサシを用意しましょう。管理人は8日指数移動平均線を利用したシグナルを提案したいと思います。
8日指数移動平均線というのは、トレンドの上下を計るポピュラーなモノサシのひとつです。8日指数移動平均線に対して、チャートの足が上下どちらかにあるかでトレンドの上下を判断します。日足が8日指数移動平均線の上で推移していれば上昇トレンド。その逆も然りです。位置関係が逆転したところでトレンド転換を疑います。
ここまでの緩やかなリラ高トレンドでは、8日指数移動平均線の下でレートが推移してきました。ギリシャ問題で急落し、このラインを割ったのですが、却って明日23日(水)のトルコ政策金利会合に期待が寄せられます。同イベントを過ぎ、もし日足が8日指数移動平均線の下側に出戻りすれば、リラ買い継続。こんなシグナルはいかがでしょうか。
爆破テロに関して補足すると、この手のリスクオフ傾向は一時的なものです。ニュースの話題としては根強く残るが、実体経済に与える影響力は少ない。これが管理人のニュースリテラシーによる認識です。身も蓋もない言い方ですが、シリア臨国のトルコじゃテロも折り込み済みとも言ってしまえます。問題があるとすれば、投資家が躊躇してサマーラリーへの参加を見送ることでしょうか。シナリオ実現の可能性が低下します。
何分、予定外の事態も加わり、今回の見通しは確度の低いものであるとの思いは拭えません。前述のサインが点灯しないようなら、サマーラリーはドルの勝利。その後は夏枯れ相場の到来です。万が一、シナリオが現実になった暁には、拍手喝采を頂きたいものです。