コラムとブログ PR

分析指標で見るFXチャートのトレンド発生・収束

本ブログは記事内に商品プロモーションを含む場合があります

先日からテレビやニュースを騒がせているロシア機撃墜の話題について。今回は、この一連の流れを題材にチャート分析のノウハウについて語ろうと思います。使うのは、エンベロープ、ボリンジャーバンド、ADXのチャートインジケータです。

トルコが領空侵犯したとして、シリア国内に向かうロシア軍の戦闘機を撃墜した事件が起きました。トルコはトルコで領空侵犯の大儀名分を掲げ、ロシアは被害者として謝罪を要求。両者の主張が一致せず、外交問題に。ロシアはトルコからの輸入品差し止めという経済制裁を加えるという事態にまで発展しました。

この一連の顛末で、トルコリラは急落。2ヶ月続いた上昇トレンドが収束する形になりました。トレンド継続の可否と収束を確認する分析手法。これらをチャート分析の観点から語ろうと思います。

エンベロープで描くトレンド

はじめにこれまでのトルコリラのトレンドを確認しておきましょう。上昇トレンドを描いていたことを明確に示すためにチャートにインジケータを追加します。使うインジケータは「エンベロープ」です。

エンベロープで見るトルコリラ円上昇トレンドエンベロープで見るトルコリラ円上昇トレンド

見ていただくと分かるように、トルコリラ円のトレンドはエンベロープの上半分で推移しています。なおかつ、中央線・包括線の傾きが上向きです。このエンベロープは強い上昇トレンドを示しています。

エンベロープ(包括線)

中央線にSMA(単純移動平均)を据え、その上端・下端に±x%だけレートをずらした包括線を加えたインジケータ。一般にはエンベロープの上端・下端が値動きの行き過ぎ(=決済の目安)とされる。

中央部分は単純移動平均を示す(=市場参加者の建て玉単価の平均を示す)ので、中央線で買い支え・トレンドの押し目になることも。トレンドラインになり得る。

分析指標に使う設定値は一般には以下の通り。ただし包括線の偏差は、株や為替の市場の違い、個々人の好み、相場の状況に応じて適宜変えて良い。

  • 設定期間:20日
  • 第一包括線:±3%
  • 第二包括線:±4.5%

このエンベロープをチャートに表示させると、対ロ関係の悪化が忌避されるまで強い上昇トレンドを描いていたことが分かります。結果論ですが、トルコ選挙前の下落も、ポジション調整の押し目に過ぎなかったという・・・。中央線付近で買っておけば、鋭いエッジの利いた(優位性の高い)トレードができたことが分かります。

エンベロープの売買ルールエンベロープの売買ルール

ボリンジャーバンドでトレンド収束

先に挙げたトルコリラの上昇トレンド。冒頭に書いた通り、今回の対ロ関係悪化を受けて収束する方向に向かいました。このトレンドの収束を明確に示す分析指標もあります。ボリンジャーバンドです。

ボリンジャーバンドでトレンドを見るボリンジャーバンドでトレンドを見る

これまで拡大していたボリンジャーバンドの幅が狭まっているのが分かると思います。これがトレンドの収束を示しています。

ボリンジャーバンド

中央に移動平均線を据え、上下に統計的な偏りを示すバンド(帯)を示した分析指標。バンドの幅は、統計学で言う正規分布(ガウス分布)の標準偏差(σ)(=ばらつき)で定められる。

設定期間内の値動きが大きいほど、中央値からの乖離が大きい(=偏差が大きい)ので、バンド幅は拡大する。チャートは値動きが強いほど平均線から乖離する傾向があるので、バンド幅が拡大している局面ではトレンドが強く出ていると言える。逆にバンド幅が狭まる局面は平均線に近づいているので、トレンドが収束する局面であると言える。

為替チャートでは、強い値動きでも±2σのバンド幅に収まると言われている。しかし、トルコリラのように値動きの荒い通貨では3σに達することもザラにある。設定値は以下を用いる。

  • 対象期間:20日
  • バンド幅1:±1σ
  • バンド幅2:±2σ
  • バンド幅3:±3σ

今回の一件では、対ロ関係の悪化を受けてバンド幅が狭まる方向に向かっていることが分かります。これがトレンド収束のサインです。逆に、トレンド初期ではバンド幅が拡大を始めていたことも分かります。

ボリンジャーバンドでトレンド縮小ボリンジャーバンドでトレンド縮小

ADXで分析を補完

トレンドの発生・収束を見る補完的なインジケータをもうひとつ紹介します。ADX(DMI)という分析指標です。

ADXでトレンド分析を補完ADXでトレンド分析を補完

ADXはトレンドの拡大・収束を示す補完的なインジケータです。先に挙げたボリンジャーバンドだけでもトレンドを見ることはできるのですが、ADXを加えてやると、より明確に状況を理解することができます。

ADX(DMI)

ADX(Average Directional Movement)は、DMI(Directional Movement Indicator)から算出される。DMIは相場の方向性を示すインジケータで、上昇方向の強さを示す+DMIと、下降方向の強さを示す-DMIがある。ADXは、両者の差で示される。

+DMIと-DMIは、相場が同一の方向に動くほど乖離する傾向にある。すなわち、両者の差であるADXの値はトレンドが発生している局面ほど大きな値となる。逆に、値動きの方向性が定まらなければ+DMIと-DMIは近しい値となりやすい。従って、トレンドの見えない状況ではADXの値が下がる傾向にある。

分析指数の算出期間は、他のインジケータと比較して短い値を使う。例えば、20日期間のボリンジャーバンドと合わせて使う場合であれば、一般にはADX/DMIの算出期間は14日間。短い期間で直近の値動きに重きを置くという使い方をする。

今回のトルコリラで言うと、ロシア機撃墜の事件以降のADXは下がる方向に動いていました。この意味するところは、トレンドの収束です。別の言い方をすれば、新規の売りトレンドが発生している訳ではないということです。

確かに為替レートは短期的に大きく下がりました。しかしドテン売りの局面ではありません。トレンドレスなので値幅を見込むことができないためです。むしろ売られすぎて中央線(20日移動平均)に戻するんじゃね?という状況でした。この推測が当たり、確かにレートは20日線に戻しました。ボリンジャーバンドの中央値である20日移動平均線は、レートが収束する価格の目安でもあります。

ADXでトレンドの収束を確認ADXでトレンドの収束を確認

次のトレンド発生のタイミングを待つ

最後に今後の展開について。繰り返しになりますが、トルコリラはしばらく続いた上昇トレンドが一旦終わりを告げる形になりました。下記チャートの通り、ボリンジャーバンドの幅はくびれ、ADXは低空飛行中。現在の売買トレンドは膠着状態にあり、次のトレンド発生を待つ状況です。

この状況で考えられる次の展開は2つ。新規トレンドの発生か、もみ合い相場の継続です。この分析を経て、始めて次の材料を探す必要が出てきます。

為替の季節要因

例年の傾向で言えば、12月のこの時期はクリスマス入り。海外勢は長いクリスマス休暇を取り、為替相場は閑散としやすい季節です。時期的な要因だけを考えるのであれば、もみ合い相場が濃厚です。

2015年の特殊要因

例年はクリスマス休暇入りと書きましたが、今年は特殊なイベントが控えています。ざっと以下に挙げてみましょう。例年の年末相場とはちょっと様相が変わりそうです。

  • 12月の米利上げ観測が濃厚
  • 世界同時株安でファンド勢が利益を上げられていない
  • 新政権発足やテロでトルコに注目が集まる

これらの事情を鑑みると、おそらく海外トレーダーは休み返上で待機でしょう。トルコリラ担当者なんかは胃をキリキリさせて状況を伺っていると考えます。

本日12月3日のECB理事会に、12月4日には米雇用統計。12月15日、16日は利上げに注目の集まるFOMCが開催されます。いずれも世界経済を大きく動かす要因となるべきイベントです。これらのイベントで、多くの通貨が動き始めることでしょう。丁度、トルコリラは小休止。動き始めた次の動きに素直についていけば良いと考えます。

同じカテゴリーの関連記事
先進国にも悩ましいチャイナリスク コラムとブログ

チャイナリスクがトルコリラに与える影響

2016年3月28日
トルコリラの為替投資戦略
今回は中国経済の成長鈍化懸念が世界に与える影響を紐解いていきたいと思います。本ブログの主旨であるトルコリラへの影響も考察していきます。 チャイナリスク。直近のニュースで頻 …