トルコリラは2005年にデノミネーションを実施した通貨です。過去の値動きを見ると、このデノミの前後で面白い事態が起きていました。トルコリラ買いのトレンドが発生していたのです。
一般にデノミと言えば、通貨の実力が疑われる性質のイベントです。なのに2004年から2006年に掛けて、トルコリラは買われ続けました。一体、原因はなんだったのでしょうか?
この記事を書いているのは2018年の3月です。今回は、少し古くて新しいニュースをお届けしていきたいと思います。
デノミ前後にトルコリラ買い
最初にデノミ前後のトルコリラの動きを見てみましょう。トルコは2005年1月1日にデノミを実施し、旧トルコリラ(TRL)から新トルコリラ(TRY)への通貨変更を行いました。以下は、その前後でのトルコリラの値動きです。
対ドルレートですので、下に行くほどリラ買いです。チャートに書き込んだ通り、2004年から2006年のデノミ前後でトルコリラは買い一辺倒のトレンドにあったのですね。「永遠の減価通貨」なんて呼び名もあるトルコリラですが、実は過去を遡るとちゃんと買われていた時期があることが分かります。
不思議な点は「デノミ」というマイナスのイベント前後でリラ買いトレンドが発生していることです。この点を不思議に思い、管理人はちょっと調べてみました。すると背景には古くて新しい、別の要因があったのです。
2005年前後の世界経済とリラ買いの事情
2005年と言えば、米国のドットコムバブル(通称ITバブル)崩壊からの痛手から回復し、徐々に景気が良くなる情勢がありました。日本でも2004年が就職氷河期の最終年とされ、2005年からはリーマンショックが起こるまでは、上向きの景気が続いた時期でした。
この時期に実施されたのが、米国の「利上げ」です。2004年1月から2006年一杯まで、米国は計17回の利上げを実施しました。緩和路線から緊縮路線への転換です。政策金利は、実に1.00%から5.15%にまで引き上げられました。
この時期をチャートに重ねると、デノミでリラ買いの謎が解けそうです。そう、利上げでトルコリラが買われたという説です。管理人はこの説を信望していて、「健全な利上げは好景気の証」「好景気でこそ新興国通貨は買われる」というロジックを持っています。ざっと図にすると、以下のような事情があると考えます。
簡単に言って、投資先を探して彷徨ったキャッシュが新興国に流れ込むという事情ですね。政策金利に比例して、ファンドが借入れる金利の負担も上積みされますから、その分の利益を増やさねばなりません。向かった先がトルコに代表される新興国通貨という次第です。
実際問題、買われたのはトルコリラだけではありません。メキシコペソだって買われました。ともかく溢れかえっていた投資マネーが新興国へ向かったのでしょう。以下は、メキシコペソの当時のチャートです。やはり、ここでもペソ買いトレンドが出ていたことが分かります。
米国利上げで金利通貨買い
実は、管理人がトルコリラに出会ったのはこのデノミが実施された前後の時期です。当時は株式専門にトレードしていましたが、ふと見た投資信託のページで見てしまいました。トルコ関係の投資信託がランキング上位を埋め尽くす様を。そのくらい、当時のトルコリラは大きく買われた通貨でした。
ただ、過去の話ばかりをしている訳ではありません。「利上げ」「金融正常化」「新興国通貨」辺りのキーワードは2018年の現在、まさに進行している事態です。
もう一度、チャートを見てみましょう。2004年の利上げ後に一度、トルコリラが売られているのが分かりますね。これは当時「金融正常化が始まって景気が悪くなる」という憶測が出ていたためです。この話、最近になって耳にしませんか? そう、まさに金融緩和が終わった2018年現在の話とピッタリ一致するのです。
管理人、2018年は年初からかなりリラ買いを煽っています。ただ、何の根拠がない訳でもありません。今回書いた話の通り、それなりに過去の事情を研究した上で書いているのです。市場はまだ金融正常化に疑心暗鬼の状況です。そんな2018年の展望に興味のある方は、以下の記事もご覧あれ。