今回はトルコに関係するFXのイベントから、トルコリラのFXレートを見通していこうと思います。
皆さん周知の通り、トルコは政策金利を大幅に引き上げました。これを受けて、トルコリラは急伸。24円台中盤まで為替レートを回復する値動きを見せました。ただ、ここからの展開はちょっと心配になる場面です。特に6月末に控える大統領選挙や、利上げによる材料の出尽くし感は心配の種にさえなりえます。
ただ、FXのイベントは6月以降もまだまだ控えています。そこで今後のFXイベントと共に、管理人なりの展望を語っていきたいと思います。
トルコ中央銀行の動向
最初にトルコ国内の金融政策から見ていきましょう。ご存知の通り、トルコ中銀は6月の金融政策会合でトルコ政策金利を17.75%に引き上げました。これを受けて、トルコリラは23円台から24.5円までジャンプアップ。期待以上の中銀の働きに市場参加者は色めき立ちました。
一見、単純に見える利上げ構造ですが、この背景には中央銀行の度重なる苦労がありました。これまたご存知の通り、エルドアン大統領による利下げ圧力があったためです。ただ、5月に入ってからのトルコリラ急落を受けて、政府関係者もとうとう危機感を持つに至りました。トルコ中銀の総裁は元より、政府の金融アドバイザー、財務相の説得を受けて、頑固なエルドアン大統領もとうとう態度を軟化させました。その結果が、今回の大幅利上げという次第です。
こうした経緯を経て、トルコ中銀は大幅に利上げを敢行することができました。実に1年6ヵ月ぶりの利上げです。ただ、トルコリラの下落具合を見れば、少し遅い感もあります。この点、まだトルコ中銀には利上げの余力が残っているものと推察できます。実際、中銀総裁からは「必要があれば追加措置を取る」との発言が出ていますので、今後、追加利上げがあっても不思議ではありません。
大統領選挙は織り込み済み
エルドアン大統領が態度を軟化させた背景として、もう一点、重要なイベントが控えています。トルコの大統領選挙です。既に2017年4月に一度、大統領権限の強化について国民投票が行われたトルコですが、エルドアン大統領の意思決定により、この2018年にも前倒しで大統領選挙が行われることになりました。
本来、大統領選挙と言えば、リスクイベントで為替レートにとってはマイナス要因です。理由は先行きの不透明感から市場参加者の取引が手控えられる傾向があるためです。ただ、トルコリラの場合は十分に市場にリスクオフが蔓延しました。既に大統領選挙の不透明感は織り込んでいるものと見てよいでしょう。
勿論、大統領選挙の結果もその後の金融政策も未だ結果は分かりません。しかしながら、幸か不幸か現大統領は度重なる利下げ発言を繰り返しました。もう十分に、市場に嫌気されているのです。言わば、選挙後の未来予測を前倒しで市場に周知させ、リスクオフの値動きを選挙に先立って織り込ませたもの考えます。
選挙結果について個人的な予想を述べるなら、今回もエルドアン大統領の勝利でしょう。為替レートこそ下落しているものの、株価は好調ですし、トルコ国内の景気は上向いています。このため、トルコ国内の支持率は相応にいいものと解釈できます。インフレ率こそ上昇しているものの、その対策を打つとアピールしていますので、これまた支持率を上げる要因にすらなると考えます。
EU金融緩和策の終了は追い風
話を変えて、トルコ国外に目を向けてみましょう。最近になって、EUの金融緩和が終了するとの憶測が市場に流れています。その真偽は置いておいても、そのインパクトは市場に十分に影響を与えます。具体的には、トルコリラの為替レートにとってはプラスの材料です。
理由の一つとして、日米欧の金融緩和策によってトルコから資本が流出した過去が挙げられます。既にアメリカは金融緩和策を終えていますから、ここでEUも金融緩和策終了となれば、資本流出の巻き戻しが加速されます。既に米国株・欧州株は割高ですので、バリエーションの利いた新興国市場に資本が戻ってくると考えています。
もう一つの理由として、EUの金融緩和策終了が市場で噂されることでユーロの為替レートが上がっていることも挙げられます。トルコはEU圏に近いせいか、ユーロに連動して買われる傾向のある通貨です。地政学的に近い国の通貨レートが上がることで、それに乗じてリラのレートも上がるかも知れません。
もっとも、あくまで現在は憶測の範囲を出ません。多民族集団である欧州の性質として、意思決定が遅いことは頭にいれておきましょう。しばらくは噂と事実が入り交じり、グダグダとした展開になることが予想されます。もっとも、相場というものは噂があれば十分に買いの理由になる性質がある所でもあります。
今年は熱い夏が来るか
ここまで良いことばかりを書きましたが、そればかりではありません。トルコの経済基盤が脆弱であることに変わりはありません。特に為替レートがこれ以上下がるとトルコ企業の対外債務負担が増え、景気と経済成長率に大きなマイナスの影響を与えてしまいます。これ以上のリラ安は、さすがに楽観的な管理人でも看過できません。
そこで気になるのが、大統領選挙が終わった後の夏の値動きです。夏と言えば海外の市場参加者が夏休みで休場する季節です。ただ、その夏休み返上で買いが入る年がまれにあるのです。いわゆる「サマーラリー」がある年です。このサマーラリーで買いが入るようなら、今年のトルコリラはひとまず修羅場を超えたと判断したいと考えています。
ファンダメンタルズ要因としても、大統領選挙後の新政権は市場の期待が掛かる材料です。新政権への期待からトルコに資本が戻るようなら、トルコリラのレートも上昇を期待することができます。そうでなくとも、ただでさえトルコリラは売られすぎました。短期的に見て、戻りを試してよい場面です。
そんな訳で、個人的には大統領選挙の後は買いだと思います。後は、夏の値動きに期待して待っている投資が面白そうだと考えています。スワップポイントも十分上がったことですし、良い仕込みのタイミングになると考えます。
※本記事は、管理人個人の主観が多分に含まれる文章です。また、過去・将来に渡る事実を保証するものではありません。FXは自己責任です。投資判断はご自身で行ってください。