今回の記事では、読者の方から寄せられた海外ニュースの情報を紹介・解釈していきます。
トルコリラが直近高値を付けた4月11日、海外メディアのDaillyNewsで、ゴールドマンサックスのトルコリラ下落予想の記事が掲載されました。
このニュースの詳細と今後の相場動向、そしてニュースの解釈の仕方、筆者個人の考察を述べていきます。
ゴールドマンサックスのトルコリラ下落予想
つい先日、読者の方から一通のメールを頂きました。
ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーがトルコリラ下落の予想を発表しているという情報です。今回、読者の方から頂いた情報は、以下のニュースです。英語ですので、要約は筆者の意訳によるものです。
- ゴールドマンサックスは、トルコリラ為替レートの復調は持続しないと予想。
- 下落予想レートはUSD/TRY=2.5。
- トルコリラの復調でトルコ中銀は利上げを遅らせているが、さらに今後の利上げがあり得る。
American bank Goldman Sachs predicted the Turkish Lira’s recent recovery is not sustainable and the dollar will climb up to 2.5 against the Turkish currency in six months to a year.
The bank said the lira covered around 40 percent of the value it lost between May 2014 and January 2014, making the currency around 5.5 percent over-valued.
However, it added lira’s ascent is not sustainable, citing a global environment that “will become supportive of the dollar,” and “the damage the currency rate will create on macroeconomic recovery.”
The bank also added it postponed expectation of Central Bank to hike interest rates by 200 base points to the second half of the year due to the rise in the lira.
情報源:DailyNews4月11日
さらにBloombergのこんなニュースも教えて頂きました。
- モルガンスタンレーは、2014年内にUSD/TRY=2.3まで弱含むと予想。
- ゴールドマンサックスは、12ヶ月後に2.5まで下落すると予想。
We have no doubt that some companies will be facing very significant financial distress and some might not be able to roll their obligations, leading to company failures or defaults,” Tevfik Aksoy, chief economist for Europe, Middle East and Africa at Morgan Stanley, wrote in an e-mailed note on April 11. “Many companies borrowed externally to take advantage of the quantitative easing.”
Morgan Stanley predicts the lira will weaken to 2.30 per dollar in 2014. Goldman Sachs Group Inc. expects a drop to 2.50 in the next 12 months.
情報源:Bloomeberg4月17日
2014年4月末現在、トルコリラは日足チャートで上昇トレンドを描いています。
しかし、どうにも投資機関の予想は異なるようです。
複数の投資機関が悲観的な予想を打ち出しています。
トルコリラ下落予想の根拠
では、投資機関はどのような根拠を元に、トルコリラの下落予想をしているのでしょうか。
前述の記事には、トルコリラ下落を予想する投資機関の判断根拠も記載されています。
その文面から、彼らの論拠が見えてきます。
論拠を噛み砕いて説明すると、以下のようになります。
- トルコ国内企業の対ドル債権が膨らみすぎている。
- 2013年のドル高リラ安の悪影響が出る。社債返済における(特にアメリカに対して)対外的な負担が増加する。
- 結果、経済成長が落ち込み、対ドル債権のデフォルトリスクが浮上する。
The currency will slip 1.1 percent in the second quarter and end the year little changed, according to Przemyslaw Kwiecien, chief economist at X-Trade Brokers Dom Maklerski SA in Warsaw, the most accurate analyst of the lira in the first three months of 2014. While the lira has risen 2.8 percent since the March 30 vote, it remains 16 percent lower over the past 12 months, boosting corporate debt-servicing costs, he said.
The weakened currency is weighing on Turkish businesses, which owed a net $198.3 billion of non-lira debt as of February, central bank data show. While political unrest has calmed since a graft probe targeting the government erupted in December, Turkey’s economic growth is still predicted to decelerate to 2.3 percent this year from 3.9 percent in 2013, according to economist forecasts surveyed by Bloomberg.
“The economy is going to slow down and those indebted in U.S. dollars will have problems on the revenue side,” Kwiecien said in a phone interview on April 14. “The pressure on the lira may reappear because fears that those dollar debts won’t be repaid will return.”
情報源:Bloomverg4月17日
この論拠は、理に適っています。
トルコの産業が、海外からの投資に依存していることは周知の事実です。
その投資は、社債という形でトルコ企業が募集をしています。
社債は借金の一種ですから、利子を支払わねばなりません。
そこで、リラ安が強まれば、1ドルの社債に対して多めにリラを払わねばなりませんから、企業の負担は増加します。
確かに、トルコ経済の成長が停滞するリスクをはらんでいます。
節操がないと思われるかもしれませんが、筆者もこのニュースを読んで相場観を見直す必要があると感じました。
リラ下落予想を公表する投資機関の思惑
冒頭の通り、トルコリラ下落に対する悲観的なニュースが報道されました。
もっとも、本当に社債がデフォルトを起こすかという点は別の話です。
ここには、アナリストの主観的意見が多分に含まれています。
下落相場がやってきそうである点は否めませんが、その要因は「デフォルトのリスクが注目されるから」程度の認識に留めておいたほうが良さそうです。
ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーが、わざわざニュースで下落予想を公表する理由は何か?
この点を考えると、ニュースの読み方が分かってきます。
それは、投資機関には市場を動かしたい思惑があるからです。
以下に突っ込んで解説をしていきたいと思います。
投資アナリストがあえて市場分析を公表する理由
基本的に投資機関が市場予測を公表するケースでは、彼らが何かしらの思惑を
抱えていると疑う必要があります。
それは、彼らはアナリストであると同時に職業として相場に臨む投資家であるからです。
筆者のような個人投資家の気まぐれならともかく、職業人である彼らが検討した上
で、あえて手の内を明かすのですから、彼らにとって何かしらのメリットが生じ
るのであろうと考えるのが妥当な線です。
今回のケースで考えられるものの一つは、例えば安く買い叩きたいとの思惑です。
ゴールドマンサックスと言えば、知名度のある投資機関ですから、例えポジショントークとしても、相場には影響を与えます。
ただ、他の投資家がその予測に一理あると考えれば、その予想に乗ってくるでしょう。加えて、資金の量も豊富ですから、彼らのポジション取りは実勢価格にも影響を与えます。結果、知名度・資金力共にあるゴールドマンサックスがマーケットに与える影響によって、相場が下落する圧力が加わります。
MISTとゴールドマンサックス
ただ、ゴールドマンサックスとて、トルコをデフォルトさせたい訳ではないでしょう。
トルコリラ下落は彼らの思惑のうちなのではないでしょうか。
なぜなら、彼らはトルコという国に対して「買い」のスタンスであるからです。
ゴールドマンサックスというと、ジムオニールが有名ですね。
読者の皆さんは、MISTという単語をご存知でしょうか?
MISTとは、ゴールドマンサックス会長のジムオニールが提唱するBRICSの次に来る新興国の名称です。
メキシコ(Mexico)・インドネシア(Indnesia)・韓国(SouthKorea)、そしてトルコ
(Turk)の頭文字で、ゴールドマンサックスは次の成長市場と位置づけています。
このような概念を打ち出すくらいですから、トルコを含む上記の国に対して、彼らの戦略は「買い」です。
冒頭に書いた通り、「安く買い叩きたい」辺りががゴールドマンサックスの
本音であるかもしれません。
最後の部分は、筆者の邪推が混ざっていますが、投資機関が自らのメリットのために市場予想を公表することは、よくある話です。
このため、投資機関の予想を鵜呑みにすることは危険です。
相場のニュースを読むときは、一歩踏み込んで利害関係者の思惑を汲み取って解釈する必要があります。
トルコリラ長期保有のアドバイス
最後に長期投資をされる方への管理人からのアドバイスです。
今回、情報を提供して頂いた読者の方も、冒頭のニュースを読んで、ポジションの長期保有を迷われていたようです。
僭越ながら、以下のアドバイスをさせて頂きました。
まず、基本的に長期にトルコが伸びると決めて買うのなら買うべきです。
長期投資と言うと、10年先の見通しを持ってホールドするということです。
そうであるなら、今回の予想が実現し、トルコリラが安くなったところで買えばよいと思います。
ただし、焦点となるのは「どこで買うか?」という問題です。
この点、筆者は安いところで買い叩きを推奨します。
相場材料①:1年後のリスクオン相場
1つ目の理由は、ゴールドマンの予想が実現するのが2014年中~遅くとも2015年
初めであるからです。
金利上昇で新興国投資をするファンドの事情の記事に書いた米利上げが始まる見通しは、2015年の年初が現在のコンセンサスです。
筆者は、リスクオン相場でトルコリラに注目が集まるのはこの時期からと予想していて、2014年中に相場が下落するようなら、そこは押し目と考えます。
大きな買いを入れるなら、2014年の年内に材料出尽くしで相場が下がりきったところがポイントです。
ゴールドマン的には、それを狙っているのかもしれないと考えています。
相場材料②:長期ホールドか短期買いか?
2つ目は、直近のトレンドがややリラ高であることです。
当サイトでも市場予測はしていますが、レポートを毎月書いているように、1ヵ月先
までしか見通していません。
今月のレポートでは、筆者の意見はリラ買い推奨です。
短期的には、買いだと思います。
この点、ゴールドマンの予想はもう少し先の時期を予想しています。
同社が予想するUSD/TRY=2.5が来る時期は、12ヵ月後です。
現在のポジションを保有している方は、それまでに解消すれば良いでしょう。
言い方を変えれば、今回のゴールドマンの市場予測で半年先のトルコリラリラ下落を不安視される相場観をお持ちの方は、売るべきです。
同じく、新規ポジション建てる場合は、トルコリラが安くなる機会を待つべきです。
中期的には、売りです。
ただ、さらに長期となると目先の材料がありません。
それでも買うべき理由は、トルコの成長力と多大なスワップポイントの恩恵があるからです。
10年後を見通すのなら、目先のアナリストの予想は短期要因にしかなりません。
目先の見通しよりも信念の問題です。
関連記事:10年後にトルコリラ運用利益はいくらになるのか【検証結果を公開】
相場材料③:トルコ破綻のリスクはあるのか?
3つ目で最後は、長期保有を見越しているのなら、当然、安い所で買うべきだという理由で
す。
長期投資はハイリスク・ハイリターンです。
しかし、ハイリスクとは言え、確実に負けが決まるのはトルコが再び破綻した場合だけです。
その点、流石にMISTの件を考えるとゴールドマンサックスとしては、トルコに破綻されては困ります。
破綻の懸念がないのなら、市場が絶望したところで買い叩くべきでしょう。
為替は回帰性が強い市場ですので、例え下落したとしても、10年あれば再び元の水準に戻ると考えます。
逆に、それくらいの気概がないと長期投資は難しいと思います。
以上、サイト管理人の個人的な考察でした。なお、今回の記事は、情報を提供して頂いた読者の方へ了承を得た上、やり取りの内容をアレンジして掲載しました。
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